俳優・音楽家の星野源さんが、生活の風景と哲学を丁寧につづったエッセイ『いのちの車窓から』(角川文庫)。ここでは、星野さんが聞いた2つの言葉から、人生の“終わり”について考えた「人間」をご紹介します。
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2年前の2013年冬。森ノ宮ピロティホールで行われた「笑福亭鶴瓶落語会」の大阪公演、その打ち上げ会場の居酒屋にいた。
病気療養中の時期で、毎日トレーニングで基礎体力向上に努めていた自分を、鶴瓶さんが厚意で大阪に呼んでくれた。
「この後ないやろ? 大阪やし。打ち上げ行こうや。俺についてき」
終演後楽屋に挨拶に行くとそう言って、知り合いもおらず一人で来ていた私をそばに引き寄せた。
大勢のスタッフ、大阪公演を見に来た関係者がいる中、心細い気分であった自分を隣に置いて、鶴瓶さんは酒を飲み始めた。今日の噺の出来、この年になって落語をより本格的に始めた経緯、奥さんとの面白いエピソード。ステージとなんら変わらない口調で周りを笑わせ、楽しませてくれた。
酔いが回ってくるにつれ、自然と中村勘三郎さんの話題になった。