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 それから2年が経った。翌年の落語会にもお邪魔させていただいたり、毎月1回行われる無学の会というイベントのゲストとしても出演させていただき、交流は続いた。春から夏にさしかかった4月末、鶴瓶さんから電話があった。

「源ちゃん、今『鶴瓶噺』やっててな」

 約2時間の舞台が、ノンストップのフリートークのみで構成される『鶴瓶噺』。落語会には足を運んでいたが、『鶴瓶噺』は未見だった。行ってもいいですか? とお願いすると快諾してくれた。

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 開演すると、ステージに鶴瓶さんが手を振りながら現れた。

「全然寝てていいですから、いつでもトイレ行っていいですからね」

 客席のご老人に話しかけ、鶴瓶噺がスタートする。この一年溜めたネタ、本当にあった面白いエピソードを次々と話す。とんでもないエピソードに爆笑し、堪え笑いをクスクスと会場全体で共有しているうちに、あっという間に時間が過ぎていった。

「今年は、うちの師匠の笑福亭松鶴の三十回忌なので、おやっさん(松鶴)のことを話すっていうことでやろうと思ったんです」

 そこから、松鶴師匠のエピソードを話し出した。弟子入り直後からテレビスターになってしまった鶴瓶さんと他の弟子とのバランスを取るために、一度も稽古をつけてもらえなかったこと、しかし、代わりに師匠は自分の落語をテープに録り、それを書き起こさせるという仕事を任せ、それが間接的な稽古になっていたこと、悪酔いして帰ってきた師匠に弟弟子が傘で滅多刺しにされて面白かったこと、笑いの隙間に様々なエピソードを織り交ぜ、最後にこう語った。