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「勘三郎はほんまアホやで」
鶴瓶さんは勘三郎さんと無二の親友で、仕事仲間だった。打ち上げも佳境にさしかかった頃、生前勘三郎さんがした悪戯や、トラブルの話で盛り上がった。爆笑に次ぐ爆笑。今は亡き人のことでこんなに笑えることはそうなかった。
「人間は死んだら終わりなんや」
鶴瓶さんが少し声を荒らげて言った。
「勘三郎みたいな、あんなすごいやつでも、あんな偉業を成し遂げた男でも、死んでしまったら、みんな忘れてしまうやんか。俺はそれが悲しい」
自分を含む周りの席が、少しだけ雰囲気を変えた。鶴瓶さんの目がまったく笑わなくなったからだ。
「まだ勘三郎が死んでから1年やろ。なのにもう、みんな忘れる。死んだら終わりやで」
キッとこちらを向いた。
「だから源ちゃんは死んだらあかんねん。ほんま、死なんでよかったなあ」
ニッコリと笑ったが、その真っ赤になった顔は少し悲しそうだった。