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100万円払っても見つからない可能性も大きい

――200万円! ずいぶん高いんですね。

東村 名前と出身地だけが手がかりの人探しって、ドラマなんかではよくありますけど、実際にはやらないそうなんです。

「浮気調査みたいに相手の行動パターンがある程度わかっているならできるけれど、ゼロからの人探しは基本的にやらない」と言われて、「なんのための探偵なの!?」って言いそうになりましたよ。まあ向こうの言い分もわかるんですけどね。

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「飛行機代もホテル代も、必要経費はすべて100万円の中でまかなうので、それ以上に経費はかかりません」と言われましたけど、100万円払っても見つからない可能性も大きいわけです。

 さすがに高すぎるのでやめましたが、30万円くらい出せば簡単に見つかると思っていたので、甘くないんだなって、しみじみと思いました。

 

「私のことを憶えていますか」って、意外に勇気がいる質問

――残念でしたね……。でも、もし会えていたら、漫画と同じように「私のことを憶えていますか」と聞いていたと思いますか?

東村 仮に35万円で探偵に頼んで再会できたら、開き直って聞いたと思います。3年生なので憶えているかどうか微妙なところですが、憶えていてくれたらそれでいいなと思うので。

 でも、「私のことを憶えていますか」って、意外に勇気がいる質問だと思うんです。どうでもいい相手だったらいくらでも聞けるんですけど、好きな人に聞くのってハードル高いと思うんですよね。

――それはなぜ?

東村 だって、もし昔好きだった異性から「憶えてない」なんて言われたら、立ち直れないくらい傷つきますよ。だからもし、宮崎の居酒屋とかで偶然こうちゃんに会えた時は、「私のことを憶えていますか」なんて聞けないかも。

「聞きたいけど聞けない」というテーマを込めて

――すごく簡単なことなのに、聞けそうで聞けない。そんな思いがタイトルにもなっているのですね。

東村 そうです。タイトルもいろいろ考えたんですけど、「好きな人になると、聞きたいけど聞けない」というテーマを込めて『私のことを憶えていますか』に決めました。

 事実確認をしているだけなので、最悪「憶えていない」と言われた時に、「聞いただけです」と逃げられるというのもいいですよね。これが「私のことをどう思っていましたか」だと、逃げられませんから(笑)。

後編へ続く)

 

取材、構成=相澤洋美
写真=松本輝一/文藝春秋
ヘアメイク=後藤るみ
スタイリスト=藤原わこ