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 ドラマ「火垂るの墓」(2005年)もノーメイクな松嶋菜々子に心揺さぶられる一作だ。アニメでは鬼のように描かれていた叔母の役。実写化ドラマで彼女がすると聞いたときはよく引き受けたな、と本当に驚いた。しかし観てみると、ひたすら母性がむき出し状態。父とアニメ「火垂るの墓」を見ていたとき、

「自分の子どもの食料を守るためなら、母親は他の子どもには鬼になる。うちもそうやった。当たり前やったんやで」

 と言っていたのを思い出す、そんな深い深い存在だった。

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 松嶋菜々子の器は大きい。正直、この「藁の楯」にせよ「火垂るの墓」にせよ、最初は「なぜ」と思う。

 けれど観終わると、松嶋菜々子の持つ品が余韻でジワリと残る。それが作品に救いをもたらしたり、逆に残酷さを露呈したり、全体の重みを増すのである。

圧倒的な“黒幕感”で何を演じていく?

 近年のドラマでは、女性が黒幕・ボスになるパターンが増えている。「アバランチ」の木村佳乃、「SUIT」の鈴木保奈美、「24 JAPAN」の仲間由紀恵。80~90年、ヒロインとして胸をキュンキュンさせた女優が今、貫禄を持ち、物語を大きく包み込んでいるのは本当にカッコいい。

 狂気を感じる木村佳乃にはこれからも闇の組織を引っ張ってほしいし、知的ミステリアスな仲間由紀恵にはバリバリ政治を動かしてほしい。鈴木保奈美にはビッグマネーを動かしてほしいし、天海祐希にはどんな方法でもいいので世界を牛耳ってほしい!

 松嶋菜々子は、これから誰を包み込んでいくだろう。彼女が尊敬するという白川由美さんの跡を継ぎ、「GTO」のリメイクで学校長を演じる日も来るかもしれない。

 どの役も大きくテンションを変えるわけではない。「怪演」という言葉はあまり似合わない。今回の「となりのチカラ」の占いオバサン道尾頼子も「SUPER RICH」とのギャップにはビックリするが、「どこかにいそうな人」である。

 奇をてらわず、その年齢で自分が一番持っている魅力を出し、役と擦り合わせるのがとても上手な人だと思う。

 静かなるチャレンジャー、松嶋菜々子48歳。イメージを守るのも崩すのも楽しそうな彼女にとっては50歳も60歳も「待ってました!」という感じなのかも。

「となりのチカラ」2月24日放送の第4話は、占いオバサン、道尾頼子の過去が明かされる菜々子回のようだ。観なければ!