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「笑顔、トーク力が強みの日本としては、求められるキャラが変わる心配があった」カーリング女子銀メダル・藤澤五月と吉田知那美が決勝で強いられた“よそ行きの戦い”

2022/02/21
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正確性において、日本は後手を踏んだ

 マナー、手順、正確性が要求される試合である。

 正確性において、日本は後手を踏んだ。

 試合後の数字を見ると、サードの吉田知那美、スキップ藤澤五月ともにショットの成功率が60%台に止まった一方で、イギリスはサードのビッキー・ライトが89%、スキップのイブ・ミュアヘッドが88%の高確率を残し、この数字だけ見てもイギリスが主導権を握っていたことが分かる。

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ナショナルコーチのJDリンドと作戦を練る ©JMPA

 ドレスを着たイギリスの着こなし、ふるまいは完璧に近く、日本はそれに付き合わざるを得ない。不利な石の配置を作られ、そして難易度の高いショットを要求された藤澤がショットを決めきれず、第1エンドに2点、第7エンドに4点を失ったことが直接的な敗因になった。

結果を見れば残念だったが、なにか清々しさがあった

 戦前、私は相手スキップのミュアヘッドにも、泣きどころがあると思っていた。彼女は派手なプレーヤーである。準決勝のスウェーデン戦では第1エンドに相手に4点を許し、これで万事休すと思われたが、第9エンドに自らの繊細なショットで4点を奪い返した。

 ミュアヘッドは、2010年にオリンピックにデビューした時から華麗なショットを選択しがちなスキップであり(それが彼女の魅力だ)、決勝の厳粛な色合いとは異なるキャラクターだと思っていた。

 ところが31歳を迎え、決勝では完璧なマナーを披露した。様々な舞台、そしてチームの離合集散を経験した深みが、決勝で発揮されたように思う。

©JMPA

 日本人としては、結果を見れば残念だった。

 それでも、なにか清々しさがあった。

 相手を祝福する意味も込められた「コンシード」という言葉は、わが国の囲碁将棋における「投了」の意味合いに近い。自らの負けを認め、相手を讃える。

 カーリングの「同胞意識」は、ひとつの美徳である。