『だるまちゃんとてんぐちゃん』『からすのパンやさん』など、数多の人気絵本を世に送り出してきた加古里子さんは、現在90歳。湘南の海にほど近い丘の家で、今も机に向かい描き続けている。歩んできた人生、絵本創作の原点など、初の語りおろしとなった本書の文庫化を機に、お話を伺いました。

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『未来のだるまちゃんへ』 (かこさとし 著)

――執筆時間は、1日の中でどれぐらいですか?

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加古 いやぁ、幾らでも描きたいんですけどねぇ……、首筋が痛くなったり肩が凝ったりするので、それを戻す方に時間がかかって、半分くらいロスしちゃう。若いときよりも沢山時間をかけているんですけど、やっぱりなかなか捗らないですね。生きている証拠だから、まぁ仕方がないですね(笑)。

――食事はしっかり召し上がっていらっしゃいますか?

加古 食事は定時にきちっと摂る主義なんですけど、なにしろちょっと内臓もやられていますので、色んな制約があって、もう味気ないものばっかりしか食べられない(笑)。塩分、カリウム、ナトリウム、脂肪……何でもダメ。家内と娘が代わりばんこに食事を作ってくれています。病気持ちなもんだから、毎月1回、ドライブがてらちょっと離れた病院へ車で行くんですけれども、車中からの眺めが楽しいですね。

――ご自宅から出られることはあまりないですか?

万里(加古さんの長女・鈴木万里さん) もうね、病院に行く以外、外出しなくなったの。

加古 もう、足腰がダメなもんでね。歩くと不安定だから危なくて、ひっくり返りそうになってしまう。

――では、実際に小さいお子さんに接する機会というのは、あまりないですか?

加古 ついこの間までは、公園で遊ぶ子どもを見ていたんですけど、このごろ全然接していませんからね。こんなことで、もう「世捨て人」的な化石人です(笑)。

――絵本の読者カードを通して、子どもの様子が少しは分かりますか?

加古 ええ。私にとって読者と触れ合う唯一の機会なので、本当に大事に読ませていただいています。カードは全部取って貼り付けて保管させてもらっていますよ。印象に残る子どもさんからの読者カードがあったら、子どもさんの方だけはお返事します。大人の方はちょっとさぼりますけどね(笑)。

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