身長1m80cm、体重180kgの体躯を誇り、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で“恰幅のいい”伊豆の武士、工藤茂光役を演じた俳優の米本学仁さん(42)。工藤は源平盛衰記に「太っていて、戦で難儀した」という記述が残っているほどの巨漢だったようで、大河ドラマのプロデューサーも「とことん大柄な人にお願いしたい」と考えていたという。工藤は2月6日に放送された第5話「兄との約束」で片岡愛之助さん演じる北条宗時とともに伊東祐親の刺客により落命したが、その“圧倒的な存在感”はお茶の間に強烈なインパクトを残した。

 米本さんの俳優デビューは2013年。演技未経験ながら、忠臣蔵を題材にしたハリウッド映画『47RONIN』で、主演のキアヌ・リーブスとともに戦う侍に大抜擢。以後、ハリウッドを中心に活動を続け、今回、満を持して大河初出演となった「逆輸入俳優」の素顔とはーー。(全3回の3回目/1回目から読む)

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21歳くらいの頃に離婚した両親に会いに行きました

『47RONIN』の撮影終了後、学生ビザが切れたため、一度日本に帰国しました。その時に、まずしたいと思ったのは両親と話をすること。『47RONIN』でたくさんの素晴らしい役者の方々とお話をして、皆さんが自分の生きてきた時間としっかりと向き合っていることを感じました。演じることは、人生と向き合うこと。僕も人生と向き合おうと思い、僕が21歳くらいの頃に離婚した両親に会いに行きました。

米本さん ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

『サザエさん』みたいな仲のいい家庭ではなかった僕の家。子どもの頃は、仲の悪い両親を「親だって人なんだな」と、どこか俯瞰した目で見ていました。そうじゃなく、今度は親子として、二人はどうやって出会い、どうやって僕と妹が生まれ、どうやって家族がダメになっていったかを聞きたいと思ったんです。だから、親に会いにいくときは、あえて自分に子どもに戻ることを許しました。

 実際に話をしてみると、当時二人に何があって、どういう気持ちでいたか、知らなかったことをいろいろと聞くことができました。自分の名前の由来も、親父とお袋では言うことが違ったり(笑)。そうやって、自分のルーツを知ることは、自分の演技について考えるきっかけにもなりました。

若かりし頃の米本さん(事務所提供)

自己肯定感の低い自分も、肯定する

 アメリカで演技の学校に行っている時に気づいたことなんですけど、僕は強い役を演じても、奥底に脆さとか弱さみたいなものが漂ってしまう。それは、僕の子どもの頃の体験や自己肯定感の低さからくるものなのかもしれない。

 でも、その自分の脆さみたいなものは、役者としての自分の層を厚くしてくれる「強み」でもあるのかなって、今は思っています。

 今の時代、ポジティブであることがよしとされ、持て囃されることもあると思うんです。でも、どんなに強い人でも脆い部分はあるはずだし、脆さを隠して強くいなきゃいけない理由があるのだろうなと思います。