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“犬パラッチ”めぐって大騒ぎ “密告社会”韓国の憂鬱

“パパラッチ”で1年間に800万円稼いだ人も!?

2017/12/08
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パパラッチを養成する塾も出現

 韓国はそうでなくとも「パパラッチ天国」だ。

 犬パラッチのほかにも、さまざまな密告制度が存在する。

 例えば、「不法金融パパラッチ」。

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 これは昨年6月に韓国の金融監督院が導入した制度で、金融詐欺などを密告すれば報奨金が支給される。今年は15名に総額5000万ウォン(約500万円)が支給された。

 他にも賞味期限を過ぎた食品の販売業者などを通報する食パラッチ、昨年施行された公務員やマスコミなどの接待を制限する「金英蘭法」に抵触する事案は蘭パラッチ、脱税関連は税パラッチ、観光客へのぼったくり業者については観光パラッチ、不法投棄はゴミパラッチ、コンビニなどが有料ビニール袋を無料で提供していないかをチェックするビニール袋パラッチなど、「こんなところにも!」という驚きのパパラッチもある。

韓国は知られざる「パパラッチ天国」だった ©iStock.com

 最近では、ソウル市が工事現場の安全管理のために「安全申告報奨金制」を導入し、申告すれば商品券5万ウォン(約5千円)を支給するという。

 こうしたパパラッチを養成する塾も出現し、隠しカメラの使い方などの講義が行われているそうだ。

 知り合いの50代会社員は犬パラッチについて話題が及ぶと、大きくため息をついた。

「なんでもかんでもパパラッチ。

 税パラッチでは1年間に8000万ウォン(約800万円)稼いだ人もいるそうで、これじゃあ賞金稼ぎですよ。報奨金を狙ったプロの申告屋がさまざまな分野で誕生しているわけで、道徳に訴えて一人ひとりが気をつければいいことを法律で罰する制度を作るなんて、情けない。

 どこもかしこも監視社会になってしまった。

 嫌な社会になりました」

ソウル市内、漢江沿いの公園の標識には「リード着用」「ビニール袋持参」「違反時過怠料賦課」とある 撮影/筆者

 韓国といえば、昔から北朝鮮のスパイの通報が日常にも溶け込んでいて、「疑わしければ再度見て、怪しければ申告しよう」(60年代)なんていうポスターもあったそう。今でも「11X番」「13XX番」といった電話番号ととも国家情報院や警察、国防省へ通報を促す紙が地下鉄などに貼られている。

 これも今風にいえば「北パラッチ」か。

 ただし、こちらのパパラッチは北朝鮮との対話を進めようとしている現政権になってから、あまり活発ではないようだが。

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