いじめが悪化するのを恐れ、先生には言えず
――主人公のユイと似た境遇ですね。書かれるだけでなく、直接言われることもあったんですか?
もつお ありましたね。「お前のせいで怒っているんだ」「お前が悪いんだ」って怒鳴られました。一度、悪口に耐えられなくて授業中に泣いてしまったことがあるのですが、「なんで泣くんだよ。お前が悪いのに」と、さらに怒りを買ってしまいました。
そんな風にずっと「お前が悪い」と言われ続けると、「本当に自分が悪いのかも」って思うようになっていくんですよね。
――いじめのきっかけは、何だったのでしょう。
もつお 私が何かしたせいで、リーダー格の子が怒っているらしいというのは耳にしたのですが、何をしたのかがわからなくて……。後から聞いたら、私が唐突にその子に向かって「うざい」と言ったらしいんです。そんなこと、していません! してもいないことで、あんなに無視されていたの? って、ショックでした。
先生に相談することも考えましたが、その子の怒りを買っていじめがひどくなるかもしれないと思うと、伝えられませんでした。
読者からの手紙には「学校に行くのが怖い」の文字も
――漫画では、いじめをしていたリーダー格の女の子・ミレイが、逆にいじめられるシーンもありましたね。
もつお そうですね。あれは実体験からきたエピソードで、中学生の頃にいじめの主犯格だった子が、何度かやり返されたのを参考にしました。元加害者の子がいじめられるのは、正直に言うと自業自得のように感じるし、私自身、嫌なことをされた経験があるから「当然だ」って気持ちが当時は少なからずありました。
でも、いじめの被害者が加害者側に転じた様子が怖くて。当たり前のように「死ね」と教室で罵倒するのです。相手は元加害者だから、何をしたっていいんだってみんな自分を正当化していたんですよね。
結果的に、元加害者の子はさまざまな進路を辿っていきました。中には高校進学後に仲良くなれた子もいますが、高校受験して別の学校へ進学した子もいました。
――どちらも、大変な境遇ですね。もつおさんと同じように人間関係で悩む人は、今の学生にも多そうです。
もつお そうですね。前作でも学生時代の人間関係については描いていたので、本を出版した後には、10代の女の子からお手紙をいただきました。中には、「4月から中学生になる」という小学生からのお便りもあったんです。