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「死んだら楽になるんじゃ」「私が悪いのかも」… いじめを受けた漫画家が“学校に行けない生徒”に伝えたい言葉

もつおさんインタビュー#2

2022/03/04

genre : エンタメ, 読書

note

もつお いつの間にか、自分の性格が相手の表情や人目を気にするように変わってしまいました。社会人になってからもその影響は続いていて、自分以外のミスを「あなたのせいじゃないか」って責めるように言われたら、場を収めるために認めてしまうんです。

 もう苦しいから、こんなことはやめたい。今作を描いたことで踏ん切りがついて、最近は、嫌なことをきちんと言おうと決めました。やっと、3割くらいは言えるようになったかな。10年以上かけて、少しずつ変われてきています。

「あの時は傷ついていたんだ」と過去の自分を認めるきっかけに

――漫画の連載中、読者から反響はありましたか?

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もつお Twitterで感想をもらいました。「いじめられた当時はつらい心境を誰にも言えなかったし、家庭を持った今も、自分の奥底にしまって見えないようにしていた。けど、漫画を読んだら『あの時はつらかった、傷ついていたんだ』って認めることができた。この漫画を描いてくれて、ありがとう」と言われました。当時の自分を慰める、というか、過去のつらい出来事を消化するのに役立ったんだと感じて、とてもうれしかったです。

写真はイメージです ©iStock.com

学校は自分を壊してまで大切にすべき場所じゃない

――実際に読者に会えたら、どんなことを伝えますか?

もつお どれだけ周りが敵に見えても、自分だけは自分の味方にならなきゃ駄目。

 今作を描いている間、ずっといじめについて考えてきました。読者からの手紙には、「学校で無視されているから、相談できる相手がいない」「親にも言えない」とつらい思いが吐露されています。中には、いじめがきっかけで学校に行けなくなり、抜け殻状態に陥っているという方も。

 私も同じで、人間関係でトラブルやいじめがあると、解決方法がなくて、絶望的な気持ちになるし、「死んだら楽になるんじゃ」って極端なことを考えてしまうんです。そうやっていつのまにか、「私が悪いのかも」って自分を追い詰めてしまう。

 でも、当時を振り返って思うのは、無視されてつらい思いをさせられてまで、その子たちと一緒にいる必要はないってこと。あの頃は、一人でいることが恥ずかしいって思っていたし、グループに縋らないと過ごせなかった。でも、そんなの大したことじゃないから。気にしなくていいんです。誰かの機嫌なんか気にせずに、クラスで一人、過ごしたらいいじゃないですか。

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