買い占めが起き、棚には何も残っていない
――ロシア軍がどんどん迫ってきているなか、今後キエフにいるご家族はどうされるのでしょうか?
「現状キエフの自宅周辺は、スーパーも薬局も開いていないですし、市街戦が激しくなる可能性も高い。妻が両親を1日でも早くキエフから連れ出して、私と合流し、どう安全な地へ避難するか模索していくつもりです。昨日(27日)までは、私がいる田舎ではスーパーや薬局にも商品があったのですが、もう大分少なくなってきました。今日は何店舗もまわり、何とか妻や両親のクスリを確保しました。特に酒は『これから販売されなくなる』という噂が広まったため、買い占めが起き、棚には何も残っていませんでした」
――ウクライナは国民総動員令により、18歳から60歳の男子は出国ができずにいます。戦争への士気はどうですか?
「ロシアの侵攻以前は、ウクライナ政府は頼りがいがなく『パンパース政権』などと揶揄されていました。しかし、いまはゼレンスキー大統領が国外脱出をせずにロシアに対して向かって行ってます。若い人たちは『ゼレンスキーさんと共に』と士気は高いです。一度国外に出た若者が『祖国のために戦う』とウクライナに戻ってくる『逆戻り現象』がおきているとも現地で大きく報道されています。いっぽう、ロシア国内では情報が統制されているようで、私がいまウクライナで起きていることを伝えると、ロシアの友人からは、『ロシア国内の報道とあまりにギャップがあるので信じられない』と連絡がきます」
――市街戦だけでなく、ネットをつかったフェイクニュースが盛んに流されるなど情報戦が活発になってきたと伺っています。
「先日もSNSを通じて『変圧所でロシア軍が高圧電流を送って、家電や携帯電話を破壊するといった作戦がある』『夜寝る前に家電製品、特に携帯電話やパソコンのような物を充電している方は早めに済ませて、プラグを抜いて寝てください』と呼びかける真偽不明のネットニュースを目にしました。後でフェイクだったと知人から注意喚起がまわってきたのですが、このフェイクニュースの狙いは『一斉にプラグを抜かせ、変圧所に負荷をかけさせるロシアからの作戦』だったと聞いております。
他にもこれはロシア向けだと思うんですが、東ウクライナの方で『民家にウクライナ政府からの爆弾が落ちた』とか『通りでウクライナの政府軍が市民に対して暴力をふるった』とされる写真がネット上に掲載されていました。しかし、その写真は過去の他の事件で使われた写真を転載したもので、完全なフェイクでした。そういうことはしょっちゅうあるようです」
――ウクライナ在住のロシア人との関係はどのようになっていますか?
「この3日間でどう変化があったとか、私の口から今お伝えするのはまだ難しいです。でも、『プーチン大統領が嫌いだ』という人はいますが、『ロシア人が嫌いだ』という感性はウクライナ東部の住民に関してはほぼないと思います。ロシア人で危険を感じた方は、恐らく侵攻前の緊張状態のときにロシアの親戚なりを頼って、もう国外に出ていますし、残ってらっしゃる方たちは、親ロシア派よりもウクライナ寄りの方なんだと思います。ただ首都攻防戦をやっていますので、今後どうなっていくのかは、私もわかりません……」
山本さんは今後について、不安そうに口を噤んだ。
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