ロシアは2月24日、ウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ロシア国防省はこれまでに11の空港を含むウクライナ軍の80以上の施設を攻撃したと発表した。攻撃はロシアに隣接する東部地域だけでなく、首都キエフの郊外や南部などの軍事施設にも及び、民間人の死傷者も複数出ているという。

 現地には今も在留邦人120人が取り残されている。いま、現地では何が起きているのか――。「文春オンライン」は24日夜、ウクライナ在住邦人の男性に電話で話を聞いた。

 ウクライナ・キエフ在住の山本幸一さん(仮名・50代)。山本さんは仕事の関係で2000年にウクライナに移住。現地女性と結婚し現在、ウクライナを拠点にロシア、アルメ二ア、ヨーロッパなど近郊の国々と日本との文化交流に関わる仕事を行っている。今後の生活、仕事に影響を及ぼすことから匿名を条件に取材に応じた。

ADVERTISEMENT

キエフ中心部を走るウクライナ軍の車両 ©時事通信社

◆◆◆

まずはロシア人に何が起きているのかを知ってほしい

――日本に今、伝えたいことは何でしょうか?

山本 2014年にウクライナのクリミア半島をロシアが独立自治共和国として認定し、実効支配するという問題が起きました。それをきっかけとしてウクライナ東部のドンバス地方も独立し、ロシアの庇護下に入ることを望んでいて、そのことが8年近く火種になっています。これまで、ウクライナ軍やたくさんの志願兵が命がけで領土を守ってきました。

 今回こういう事態になって世界的に注目されていますが、どうしてもウクライナ1国でロシアに対抗するのには無理があります。まずはとにかくロシア人たちに現実を知ってほしいです。プロパガンダやフェイクニュースが多く、ロシア人の中にも今、何が実際起きているかを知らない人も多いと思います。国内は情報統制されているので、正確な情報が届いていない。SNSやインターネットを介して、正しい情報を国内外のロシア人と共有して、声を挙げてこの状況を変えてほしいというのが私たちの現在の願いです。

首都・キエフ封鎖の情報も…?

――山本さんが今いらっしゃるのはウクライナのどちらですか?

山本 南部都市にあるカーミャンシケという街です。出張のため、昨日のお昼にキエフから電車で到着しました。ドニエプロという大都市から車で1時間ほどの小さな町で、ドンバス地方のドネツク地区から直線で100kmほどの距離にあります。

 まだこの街では爆撃音を聞くことはないですが、隣のドニエプロ市では爆破音が聞こえるというニュースは報道されています。来週の月曜日に帰宅予定でしたが急遽切符を買い替えて、今晩、あと5時間後ぐらいの電車に乗って帰るつもりです。ただ、キエフが封鎖される方向に向かっているという情報もあるので、電車が通常通り動くか、たどり着けるかどうかは現状不明です。