――もともと邦人はどのくらいいたのでしょうか?
山本 コロナ前は250人ほどいて、コロナが始まった時点で200人ぐらいと聞いていました。大使館から聞いた話だと今は120人ほど残っているそうです。そのうちの私を含めた70人近くが退避は希望していないようです。
――日本にはいつから帰っていない?
山本 コロナが始まった当初からなので、2018年の帰国が最後でした。ウクライナでは1日の新規感染者が2万~3万人で推移していますが、もう去年の夏ぐらいから大病の感染症という感覚はなくなっていて、季節性のインフルエンザのような感じになっています。
国外退避を阻む「ワクチン未接種問題」
その頃はワクチンの接種率は5%~10%あるかどうかというぐらいの低さで、みんなかかっていたので集団免疫に達したんじゃないかと思うような状態でした。現状はオミクロンもコロナもほとんど話題に挙がってきません。
ただ、領事の方とお話しした際には、「現地の方はワクチン接種の証明書がない場合には来日を受け入れられないと思う。かなり厳しい」という話を伺いました。仮に妻の親族とともに日本に一時退避をするとしても、親族は証明書がないとウクライナを出られないし、ビザが下りない可能性も考えています。
――ワクチン未接種であることも日本に来られない理由なんですか?
山本 そういう方もいらっしゃいます。ヨーロッパにも行けません。2、3日前に調べた時点で、国内のワクチンの2回接種率が30%程度でした。
だからウクライナから避難したい人たちが難民として押し寄せてきた場合の拒否の理由として、「ワクチン接種の証明書がない場合には受け入れられない」ということもあると思います。
――仮に奥さんのご両親を説得して退避するとしたら、どう移動しますか?
山本 空路は封鎖されたので、陸路での移動になります。近接する諸国が避難民として受け入れてくれるのかもまだはっきりと分かっていません。基本的にはウクライナの西側の都市に避難したいということで、そちらへの道が大渋滞している状態です。
クリミア併合以降、「怖い」という感覚は麻痺してきている
――ロシア側が侵攻している現場(キエフ)に近づくことへの恐怖はありますか?
山本 そうですね。爆撃も含めて怖さもありますが、怖さ以上に「残念でならない」という思いのほうが強いです。ただ、これまでも列車で国内を移動する中で、軍服を着た志願兵や徴兵された方と一緒に乗り合わせたり、駅のプラットフォームでもそういった方たちの移動を目にすることはありました。
最近は車で移動しているときも路肩に軍関係の車があったり、列車で移動中には向かいのホームの列車に戦車やタンクを乗せていたりするのも見ていたので、怖いという感覚は日本にいるときより麻痺していると思います。