血の繋がった親族同士だったはずが…プーチン大統領への憤り
ソ連崩壊以降、ロシア人とウクライナ人は、国は違っても血のつながった親族同士のような関係だったわけです。それが互いに血を流す状況に追い込まれている。プーチン大統領がそういった行為を実行したことに腹立たしい部分もありますし、それに目をつぶっているクレムリン(官邸)や周り、声を挙げないロシア人に対しても憤りを感じています。
――戦地となるのに、山本さんがすごく落ち着いていらっしゃるように窺えます。
山本 22年ここにいますし、実はつい先日もロシアの方に行ってきたばかりなんです。コロナの検査もそうですが、入国審査で別室に連れて行かれたりとか、国をまたぐような移動をしているとロシアとウクライナの情勢を肌で感じることも多いので、慣れてしまっているというのもあると思います。
ここ1カ月ほどで、急にロシアがウクライナを囲むように軍を配置して「とんでもないことを始めた」と世界では見られていますが、8年間この状況というのはずっと続いてきました。ウクライナ人にとっては8年間継続してきた中で、その一端が激しくなってきているという感覚なので、それほど慌ててもいなかったです。「ロシアならやるかもしれないな」という方向での心構えはあったと思います。
――今一番心配していることは?
山本 一番私が心配しているのは、侵攻による混乱に乗じて、ウクライナ人による強盗や盗難、空き巣が発生することです。これはまず避けられないことだと思います。
これまでも革命や混乱が起きたときは車上荒らしや空き巣、強盗は必ず発生しました。国内経済が悪化していますので、そこがやっぱり心配なところです。
侵攻そのものよりも“その後”に起こる空き巣や強盗が怖い
――食料やスーパーの状況はどうですか?
山本 緊張状態は続いていたので、もともと買いだめはしています。キエフの自宅には水も含めて1週間は問題ありません。こちらでは友人の家に泊めてもらっていますが、1週間以上の買いだめがあります。
現地で勤めている方と話すと、お店の中でも買い占めが進んでいてかなりの行列だと。一番目立つのはガソリンスタンドの行列ですね。見た方によれば30台は並んでいたとのことなので、ガソリン自体も足りなくなるのは間違いないです。
あと、最近は携帯電話などでオンライン決済ができるようにかなり進んできて、現金を持たない傾向ですが、今は銀行でお金を下ろすのにも1日あたり100ドルまでの制限がかけられていますし、一部銀行は機能が停止して混乱しています。そういったところで国民の中に不安があると思います。ただ、ソ連の崩壊などを経験して、もともと銀行とかに預けることを信頼していない国柄なので、現金を自宅に所持している人も多く、それを狙った強盗の方が怖いと感じています。
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取材の数時間後、山本さんは電車に乗り、愛する妻が待つキエフの自宅に帰宅する予定だった。無事家族とは合流できたのだろうか? 山本さんの無事を祈るばかりである。
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