先生は親バカ(?)っぷりを発揮
産休中でも私は毎月のように、息子を連れて寂庵へ先生に会いに行った。最初は机の上に置かれても静かに眠っていた息子が、今や机の上に乗って、好き放題しているのだから、時の流れって早い。先生も、息子が日に日に大きくなって、成長していく様子をみて「前まではこんなことできなかったのに! すごいねぇ~」と感心していた。
まだ数カ月のとき、先生はよく、「ノーベル賞をとりましょう」と、息子の頭をなでながら話しかけていた。コロナ禍であっても、息子の存在が希望となり、それだけで救われていた。
先生のことも気になっていたし、なるべく早く仕事に復帰しようと思っていた私は、息子の保育園が無事決まり、産後4カ月で復帰を果たした。小さな息子を保育園へ預けることが、初日は不安で仕方がなかった。けれど、初めての保育園では先生方も優しくて安心して預けることができた。自分も心身ともに疲弊していたけれど、少し離れていた寂庵での仕事のペースもすぐに取り戻すことができた。
息子と離れている時間も大切で、私は仕事をすることでリフレッシュできたし、自分を取り戻せたと思う。息子も保育園では社会性が身に付き、自分以外の大人、また子どもたちに囲まれて、人見知りは一切なかった。
結果的には、仕事に早く復帰すればするほどよかったのでは、と思う。けれど、もし産前も含めて1年半くらい休むことが許される職場であれば、そうしていたかもしれない。やはり体力的にはきつかったから。
私はすぐに仕事に復帰したので、コロナのせいもあり、ママ友をつくる機会も、親子の集まりに出ることもなかった。
先生のそばにできるだけ早く戻りたいという気持ちが強く、ちょっと無理していた気もする。体もまだ回復していない状態で、フルで仕事をし、帰ってからも育児。2人目のときは、せめて半年はゆっくり休めたら……とは思うけれど、先生のことが気になって無理だろうと考えていた。
口を開くと先生は、「チビはどうしてる?」と1日に何度も聞いてきていた。病気をしたと伝えると心配して1日に何度も電話もくれる。
「本当にあの子は頭がいい。将来、すごいことになるよ」なんて褒めちぎってくれて、先生と私だけの時に息子について話し始めるとヒートアップして、他人が聞いたら耳をふさぎたくなるような親バカ(?)っぷりを発揮していた。
「他人が聞いたらあきれられてしまうね。頭おかしくなったと思われる」と先生は笑う。確かに、私たちは息子のことを称賛しているけれど、他の子と比べようがないし、比べたら意外と大したことがないのかもしれない。