文春オンライン

「勝てるようにやっているとは思えない」専門家も戸惑うウクライナ侵攻…プーチンは“狂気の独裁者”になったのか

防衛研究所・山添博史氏インタビュー #1

note

プーチンは核を使うのか?

山添 プーチンの精神状態が、先ほど挙げた3タイプのどれかにもよります。

 一つ目のタイプ(狂気の独裁者)であれば、核のボタンを押します。押しますが、ロシア軍が機能しないかもしれない。というのも、核のボタンといっても、大陸間弾道ミサイルをウクライナに打つ必要はないんです。なので、実際に使うとすれば、今配備しているイスカンデルMといった短距離のミサイルに核弾頭を搭載して打つことになります。しかし、現場の指揮官はそんなことはやったことがないんです。

 また、核を使用しても、その後ロシア軍自身がそこに入っていかなければならないので、核防護部隊が必要です。それが出てきた軍事演習はあるんですが、今回は、核防護装備を持った部隊というのはまだ聞いていないです。それを見せ始めたら、本気の狂気が始まる可能性が高くなります。ただ、ここで言いたいのは、プーチンがいきなり「やる」と言い始めても、実際には実現しない可能性もある、ということです。

ADVERTISEMENT

 一方、プーチンが狂気を演出している(タイプ2の)場合、核防護服の部隊を出して、見せるという駆け引きをする可能性があります。

 プーチンがタイプ3、すなわち、ロシア帝国を作るという非合理的目標、感情的目標に突き動かされている場合は、このときが一番、ウクライナに核を使う可能性は低くなるのではないかと思います。ウクライナを統治して、自分をあがめさせることが目的であれば、その前に核攻撃で全てを破壊するのは考えにくいかな、と。

取材・構成=近藤奈香

「勝てるようにやっているとは思えない」専門家も戸惑うウクライナ侵攻…プーチンは“狂気の独裁者”になったのか

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事