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20年間の統治で一番の失政は……

――コロナ禍で孤立を深めたプーチンが歴史書を読み漁った結果、独自の世界観に埋没したのではという報道もあります。

山添 プーチンももうすぐ70歳です。歴史に何を残すのか、歴史に自分がどう記憶されるかを考えたとすれば、彼にとっての一番の失政は、2014年から今までのウクライナの離反なんですね。偉大なロシア帝国を20年も引き継いできた自分が、ウクライナを永久に失ったとは書かれたくない、と思ったのかもしれない。

 プーチンからしてみれば、確かにクリミア半島は取り戻したものの、結局それはウクライナのロシア嫌いを増幅させて、NATOに近づかせてしまっている。ゼレンスキー大統領も「ロシアと融和する」として当選したにも関わらず、結局、反ロシアになってしまっている。では、次に“まともな大統領”が当選したとしても、また反ロシアになって、どんどんNATOとの軍事協力を進めていくはずだ……と。

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 注意が必要なのは、実際に2021年にそうしたことが急に進んだわけではないですし、ロシアが脅かされているというのも全くの嘘です。ただ、今ではなく、未来を考えていったときに、こうした事態がどんどん繰り返されていくかもしれない、それなら最終的な解決をしよう、という判断をしたのかもしれない。

ロシア軍による侵攻を受けたウクライナ国内(ブロヴァルィー市、3月1日撮影) ©AFLO

歪んだ歴史観

 さらに、歴史を振り返るうちに、例えば17世紀に独立運動をしたウクライナ・コサックも、20世紀のロシア帝政崩壊期の独立ウクライナも、ナチスドイツが攻め込んできて協力した独立ウクライナも、モスクワが軍事力で叩き潰して服属させてきたじゃないかと。今、自分に求められているのは、ウクライナを再び叩き潰して“最終解決”をすることだ、とプーチンが思い込んだ可能性もあると思います。

 ……今話していて思いましたけれど、これは恐ろしいですね。もう何を言っても止まらない感じですよね。

――ロシアは世界第一級の核大国です。プーチンも既に核をちらつかせていますが、核戦争の現実味についてはどう見ていますか。