突然消える中国の外交官
この間の孔氏の所在や状態などに関する大使館からの公式発表等はなく、筆者の取材に対し外務省の中国関係者も「知らなかった」「特段事情は聞かされていない」と回答。在日華僑・華人らは「どうも長期帰国しているようだ」などと話しており、「身内に不幸があったのではないか」「病気療養だろう」「出入国時にそれぞれ2~3週間の隔離があればこの長期不在も不自然ではない」などとささやきあっている。
ただし、中国の在外公館において、ハイクラスの外交官は突然本国に呼び戻され、汚職などを追及されて失脚するケースも少なくない。
事実、駐大阪中国総領事館では2020年2月、現在の薛剣総領事の前任にあたる何振良氏が総領事として着任したものの、同年11月ごろに突然一時帰国し、12月には代理総領事がおかれたケースも。その後、何氏は任地大阪に復帰することなく、約半年間の代理大使の期間を経て、現在の薛剣氏が着任した。何氏の処遇も公表されていないが、何らかの容疑に問われて中国当局に身柄を拘束されたとされている。
孔氏に関しても、新型コロナウイルスがまん延し始めた2020年3月、日本記者クラブ(東京都千代田区)での会見後に、筆者のぶら下がり質問に応じたことがあるが、その際、WHO年次総会への台湾のオブザーバー参加について常態化してゆくとの見解を示し、「すでに関係各方面との調整が始まっている」と応じた。しかし、その直後にこの発言を完全に撤回し、取材を受けたこと自体も否定するなど、本国と緊密に連絡することなく、独断専行で発言する姿勢も垣間見られた。
今回の長期にわたるトップ不在を受けて、大使館周辺や日中交流団体などではそうした「前科」などから「失脚」を疑う声もささやかれているのが実情だ。
“報復劇”に利用されるケースも
ただし、同じように大使が帰国し、臨時代理大使が置かれたケースがつい最近、他の国でもみられた。リトアニアがそれだ。
同国の首都ビリニュスでは、2021年11月、台湾の代表機関「駐リトアニア台湾代表処」が開設されたが、名称に「台北」ではなく「国」格をイメージさせる「台湾」の使用をリトアニアが容認したことに中国が猛反発。施設開設の受け入れが決定された8月の段階で、中国外交部(外務省)は駐リトアニア中国大使の召還に踏み切った。
11月に代表処がオープンした直後にも、中国は「強烈な不満と厳正な抗議」を表明し、以後は大使を置かず、臨時代理大使を置いてリトアニアとの外交関係の格下げを決定。