「病気か、失脚か」――。中国の孔鉉佑駐日大使が新年早々に公の場から姿を消していたことが大使館周辺者の証言でわかった。
各種節目行事の祝辞、ビデオメッセージなどを除き、年明け以降の約2カ月間の対面公務は、すべて番頭格の楊宇公使が「臨時代理大使」の肩書でこなしており、日本の華僑・華人社会や日中交流団体などでは、「両国の交流を停滞させかねない状況」と懸念を深めている。
奇しくも今年は日中国交正常化50周年という節目の年。習近平指導部が国家の威信をかけた北京冬季オリンピック・パラリンピックという一大イベントの背後に浮上した駐日大使館トップの不可解な動静は何を示唆しているのか。
特命全権大使の長期不在は“異常事態”
孔氏の一連の不可解な動静は、大使館周辺者の指摘や駐日中国大使館(東京都港区)の行事発表などから明らかになった。
同大使館のホームページには「大使館メッセージ」の欄が設けられており、ここで孔大使や報道官の、日々の行事出席をはじめ、メディア対応などの動静が随時紹介されている。
同欄によると、孔氏は昨2021年12月29日、大使館領僑処=領事部(東京都品川区)の新たなオフィスビル開所式に出席。領事部職員との懇談の様子などが、同31日午後4時半ごろ、同欄に写真入りで掲載された。
しかし年初からは、日中友好団体の機関紙に新年の祝辞を発表したのに続き、国交正常化50周年関連の九州の友好大会(1月25日実施、26日掲載)や、四川和歌山友好省県締結式(1月26日実施、27日掲載)にビデオメッセージを送り、春節(旧正月)休暇にあたっての「新春のごあいさつ」(1月31日掲載)を公表しているものの、対面行事への出席はなく、代わりに番頭格で公使の楊宇氏が「臨時代理大使」の肩書で1月12日、中国国際航空公司(エアチャイナ)日本地区本部などを訪問したのを皮切りに、以後の対面公務をすべて代行している。
日本と中国はGDP世界第3位と2位の大国であり、かつ沖縄県石垣市の尖閣諸島をめぐるセンシティブな問題なども抱えており、特命全権大使の長期不在は尋常な状況ではない。