和歌山市内の木造一軒家で開かれていた書道教室。
「あたしも習字やりたい」
薄汚れたTシャツ姿で玄関に立っていた少女は、16歳で命を失うまで、懸命に居場所を求めていた――。
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長女が死亡した2時間後、母は妹と海に身を投げ…
和歌山市に住む鶴崎心桜(こころ)さん(当時16)が全身打撲による外傷性ショックで死亡したのは、昨年6月9日のこと。心桜さんが救急搬送された約2時間後、母・優子(仮名・37)と次女(4)が関西国際空港近くの海に身を投げ、無理心中を遂げた。
「実は、優子は4人が死亡した和歌山カレー事件で死刑判決を受けた林眞須美の長女でした。その約8カ月後の2月16日、再婚相手の派遣社員・木下匠(40)が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された」(社会部記者)
カレー事件後、優子は重い十字架を背負って生きてきた。児童養護施設から高校に通うも間もなく中退。20歳で1歳下の妹の同級生と相手方の両親の反対を押し切って結婚し、05年4月に心桜さんを出産する。
「仲の良かった同級生には『結婚しました!』と喜びに満ちた葉書を送っていました」(小中時代の同級生)
眞須美の死刑が確定した後、離婚
だが09年5月、最高裁で眞須美の死刑が確定。
「優子は『事件から離れたい』と話し、生活が脅かされることを恐れるようになっていった」(優子の知人)
そして13年に離婚。心桜さんは父親に引き取られることになったが――。
「『深夜に子供が一人でほったらかされている』という連絡を受け、何度かアパートに足を運びました。家の前に座る彼女に理由を問うと『お父さんがおらん』と」(小学校時代の校長)
一方、独身に戻った優子はライブハウスでギターを弾いていた木下と巡り合う。