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ロッテ・松川虎生とDeNA・小園健太 ともにドラフト1位の親友が交わした“約束”

文春野球コラム オープン戦2022

2022/03/08
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 3月1日。マリーンズドラフト1位の松川虎生捕手はチームをいったん離れ、市立和歌山高校の卒業式に出席をした。同級生、チームメートと久々の再会。同じく横浜ベイスターズにドラフト1位で入団をした小園健太投手とも再会した。

卒業証書を手にする松川虎生と小園健太

「よくニュースで見るから、なんか久しぶりな感じがしないなあ」と小園から言われるとニヤリと笑った。

 松川は石垣島での春季キャンプから強烈なアピールを行いメディアに取り上げられていた。初めてのキャンプも、まったく物怖じすることはなかった。全員が先輩のA組スタート。その中でも堂々と振舞った。ブルペンで先輩捕手陣に比較しても見劣りしないキャッチングを披露すると2月7日、侍ジャパンの栗山英樹監督が視察に来た際には、佐々木朗希投手のボールを初めて受けた。侍ジャパン首脳陣などが見守るなど注目が集まる中、この日、最速157キロのストレートに落差あるフォークもしっかりと受け止めた。「マジ、やばかったです。エグかったッス」と振り返る本人の顔はそれでも笑っていた。打撃でも非凡な姿を見せる。追い込まれてから粘り、逆方向にヒットを重ねた。

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 井口資仁監督は「ワクワクさせてくれる選手。リードはテンポがいい。投手への声のかけかた、タイミングもいい。打撃もいい。メンタルも強い。物怖じしない。いい意味でふてぶてしい。雰囲気もある」と絶賛。自然と松川に注目が集まり、ニュースになる機会が増えた。だから小園は「久しぶりな感じはしない」と話した。本人も「久々に学校に戻って楽しかったです。ああ俺、高校やったんやなあと思い出しました」とちょっととぼけて振り返るほど1月に入寮してからの日々は濃く、充実したものであった。

松川虎生捕手 ©千葉ロッテマリーンズ

“高校最強”の黄金バッテリーが誕生した瞬間

 松川といえば小園。高校最強バッテリーとして話題の中心にいた。出会いは中学。貝塚ヤングで初めてチームメートになった。「お互いそれまでは知らなかった」という2人は中学1年の夏に初めてバッテリーを組む。

 それまで投球練習ですらボールを受けたことはなかったが急きょ小園がリリーフ登板。黄金バッテリーはその時、誕生した。「コントロールがいいなあという印象でした」と松川。まだ、この時はその後、同じ高校に入り甲子園に出場し全国の注目を集め2人そろってドラフト1位で指名されプロ入りするとは夢にも思えなかった時だ。

 高校にはどこに進学するか悩んでいた小園に「最終的にはボクが誘いました」と一緒に市立和歌山高校入りした。「速い」。小園のボールをそう感じるようになったのは高校1年の冬ぐらいから。「だんだん球速が上がっていた」と感じるようになり、いつしか「これはプロに行く投手だと思った」という想いにまで昇華した。

 一方の松川はなかなかプロへの道は見えていなかった。スカウトが来ても小園の視察。その中で「目に留まるチャンス」とアピールすべく燃えた。手ごたえを掴んだのは高校2年冬に市立和歌山高校のグラウンドで行われた関大北陽高校との練習試合。この試合も注目の右腕目当てに多くのスカウトが集まっていた。この試合で松川はバックスクリーンに本塁打を放つなど大活躍。プロも注目する選手となっていった。

 ただ、ドラフトの時も自信を持って指名を待っていたかというとそうではない。ドラフト前日には学校内で1位指名された際のテレビ生中継の予行練習が行われたが「自分は関係ない」と参加をしていない。その中で千葉ロッテマリーンズがドラフト1位で単独指名をした。

「本当にビックリしました。松川という名のアマチュア選手がもう一人いて、その選手が指名されたのじゃないかと疑ったぐらい驚きましたし嬉しかったです」と今となっては笑い話になるような心境を口にする。そこから松川はイッキに注目の黄金ルーキーへと駆け上がっていく。首脳陣、野球評論家、メディア、ファンも絶賛をするキャッチング、スローイング、打撃。どっしりとした構えからは抜群の安定感とベテランの貫禄すら感じられる。

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