「彼はとにかく人たらしとして知られています」
「彼」とはウクライナに侵攻し、世界中から批判の嵐に晒されているロシアのプーチン大統領のことだ。元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明氏はプーチンについて、こう続けた。
「例えば、プーチンは様々な行事に遅刻することで有名で、大事な要人との会談にも遅れてきます。2014年の森喜朗元首相との会談では3時間半遅刻し、2016年に来日し当時の安倍首相と会談した際にも、約2時間半遅刻してきました。
プーチンは会談の場に姿を現すと、即座に首相や官僚など全ての関係者、1人1人の目を見て、両手でガッチリと握手をします。しかも、その握手は一瞬ではなく数秒続き、長い。握手の後、会談の場はプーチンに友好的な雰囲気へと一気に変わってしまうと外交関係者から聞いたことがあります」
待たせた後の固い握手。“アメとムチ”を使い分ける彼の演出力の高さに、各国の政治指導者も“騙されてきた”部分があるようだ。
国民からの公開質問に“チャーミング”に回答
政府関係者のみならず、ロシア国民にとってもプーチン大統領は“魅力的な男”であり続けてきた。“兄弟国”ウクライナへの侵攻にロシア国内では反戦運動が繰り広げられているが、ロシアの独立系機関「レバダ・センター」が2月頃に行った調査では、プーチン政権への支持率は69%。12月の調査から4%上昇するなど依然、高水準なのはその証左だろう。
モスクワに住む日本人男性は、プーチン大統領の人心掌握の巧みさを、こう証言する。
「国外から見える姿と異なり、意外にも、ロシア国民にとってプーチンは親しみやすい印象があるのです。例えば、年1回の恒例テレビ番組『プーチン・ホットライン』。これはプーチン大統領がスタジオに生出演し、100個近い視聴者の質問に、約4時間かけて本人が答える番組でした。
質問の中身はさまざま。政治的な質問だけではなく、プーチンのプライベートへの質問や、国民の人生相談にも答えます。初体験の年齢を聞かれ、プーチンが『覚えていない。でも最後にした時のことは覚えているよ。何時何分かも正確にね』と笑顔で答える一幕もありました」
番組内では、プーチン大統領の“頼れる兄貴ぶり”がいかんなく発揮されたという。