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「そんな金額じゃなかったと思います」仏像盗難裁判の不可解すぎる結末…原告と被告の寺に“裏金疑惑”が浮上

彷徨う仏像 #2

2022/04/01

genre : ニュース, 社会

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 近年、社会問題化している、宗教法人の“乗っ取り”――。高齢化や過疎化によって住職や檀家が不在となった、あるいは、財政状況が極端に悪化した単立寺院(宗教法人)に言葉巧みに入り込み、寺院規則や宗務規則などの内規を書き換えるなどして、その法人の代表役員や責任役員に就任し、経営・運営権を握るのだ。

 乗っ取りの目的は、その寺の持つ土地や文化財などの財産であったり、宗教法人だけに認可される墓地や納骨堂の経営など様々だ。が、宗教法人に認められる税制優遇措置を脱税、節税に利用しようと考える企業も少なくなく、ネット上ではおおっぴらに、宗教法人が売買されている。

 大岡寺の法人登記を確認すると、確かに、2009年の時点で、それまで30年以上もこの寺で勤めていた住職(#1参照。20年に死去)に代わって、Y氏が代表役員に就いていた。

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「安楽寺に仏像の譲渡を持ちかけた」

 また「黒幕」と名指しされたX氏は01年、琵琶湖上のプレジャーボートの船内に、京都市内の会社役員の手足をロープや粘着テープなどで縛って監禁し、殴る蹴るの暴行を加えたとして、逮捕監禁傷害の容疑で京都府警に逮捕。さらに08年には、偽造された不動産関係書類を裁判の証拠として提出したとして、偽造有印私文書行使の疑いで、同府警に逮捕されるという前歴も持っている。前出の大岡寺関係者が続ける。

「実は一審判決後、安楽寺は大阪高裁に控訴していたのだが、一審で敗訴した後も、安楽寺が仏像を欲しがっていることに目をつけたXは、(大岡寺の)住職に無断で、安楽寺に仏像の譲渡を持ちかけた。

大岡寺(滋賀県甲賀市) ©Motokoka(Licensed under CC BY-SA 4.0

 だが、寺同士で仏像を売買するのはあまりにバツが悪かったのだろう。表向き、『無償譲渡』として、裏では安楽寺から仏像の『預かり保証金』名目で約8500万円を受け取った」

 つまり、大岡寺は安楽寺に対し、仏像2体を実際には売却していたというのだ。それは本当なのか。私はX氏を直撃した。

X氏は直撃に対し……

――Xさんが大岡寺を乗っ取ったと言われていますが。

「違いますよ。あそこのお寺はもともと、借金塗れで、競売にかかっていた。それで、住職から相談を受けた私が、(競売をかけていた債権者に)話をつけて、(競売を)下ろさせた。助けてあげたんです」

――仏像2体について、表向きは無償譲渡としながら、実質は有償譲渡であり、大岡寺は安楽寺から約8500万円の『預かり保証金』を受け取ったと聞いています。