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「いつまで母親でいなくちゃならないの」「もっと稼ぐために風俗で働いたら」 なぜ‟毒親”だった母親を他の家族は‟責めなかった”のか

「いつまで母親でいなくちゃならないの」「もっと稼ぐために風俗で働いたら」 なぜ‟毒親”だった母親を他の家族は‟責めなかった”のか

鈴村五月さんインタビュー#2 

2022/03/21
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毒親から物理的距離を作って、自分と向き合う時間を

――ご家族は漫画のことを知っているんですか?

鈴村 知っています。デビューのきっかけはインスタグラムの漫画投稿だったのですが、その投稿前に、描いてもいいか確認しました。母は最初、「あまりひどい話は描かないでほしい」と嫌がっていたんですが、「一方的に悪く描くつもりはない」と伝えたら納得してくれて。応援する、というわけじゃないですけど、いいよ、と言ってくれました。

――「毒親」というタイトルは、親からすると強烈なようにも感じます。

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鈴村 その部分には特に反応がなかったですね。漫画だし、興味がないのかもしれません。下のきょうだいは、「読み物として面白い」と楽しんでくれています。

――漫画に理解を示してくれているのは、うれしいですね。最後に、鈴村さんと同じような環境の読者にメッセージをお願いします。

 

鈴村 私と同じような環境で育った人は、親に言われるがまま生きてきた分、自分のやりたいことや好きなことが見えにくくなっていると思います。もしその状況から抜け出したいなら、物理的に親から離れてみてほしいです。

 私自身、恋人と家を出て家族と離れる時間ができたから、絵が好きだという気持ちを見つけました。私みたいに家族との縁を切らなくていいから、社会に出て一人暮らをしたり、遠方に就職したりしてください。一人で暮らすようになると、自分のことは全部自分で決めなきゃいけなくなる。そうするうちに、否が応でも自分の将来と向き合わなくちゃいけないタイミングがやってきます。

 私もまだまだこれから。夫と結婚し、似顔絵師を始めましたが、コロナの影響で雇い止めになりました。せっかくやりたい夢をつかんだのに、自分の努力とは関係ないところで駄目になるのは悔しいじゃないですか。だから現在は保険の営業で生計を立てつつ、漫画家として独り立ちしたいと頑張っています。今回の作品を機に、また次のお仕事へつながっていくことを願っています。

毒親だけど、愛されたかった

鈴村 五月

KADOKAWA

2022年2月7日 発売

鈴村 五月/インスタグラムで投稿した漫画「最強の母が毒親になった日」をきっかけにデビュー。自分の過去と日常を、「私の生き恥が誰かのお薬になりますように」をコンセプトにエッセイ漫画にする。

「いつまで母親でいなくちゃならないの」「もっと稼ぐために風俗で働いたら」 なぜ‟毒親”だった母親を他の家族は‟責めなかった”のか

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