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アメニティ有料化に、現場からは猛烈な反対が

 私は以前大手不動産系のホテル会社に出向し、経営企画部長をしていたが、当時無料のアメニティをやめ、環境保護の目的で顧客に持参してもらう。持参してこなかった顧客に対しては、通常の無料アメニティよりも質の良い、使い捨てではないものを販売しようと、社内で提案したことがある。

 顧客によって使用するアメニティは違うであろうし、男女によっても当然異なるので、「松」「竹」「梅」といったいくつかのパッケージを考案し、価格も200円から700円程度で選べるものとした。ところがこの提案は現場からの猛烈な反対にあって頓挫してしまう。フロントでチェックインを行う時にアメニティの確認や販売までさせられるのはたまらない。ただでさえ忙しいのに労働強化である、客だって怒る、クレーム対応まで背負い込むのはごめんだというわけだ。

年間で1400万円かかるビジネスホテルのアメニティ

 通常ビジネスホテルなどで常備されているアメニティは、使い捨てのプラスチックでワンセットの原価は150円から200円程度だ。たかがと思う金額かもしれないが、ホテル経営にとって、無料で常備するアメニティのコストはバカにならない。200室のビジネスホテルを例にしてみよう。シングル160室、ダブル40室として部屋に常備するアメニティ数は240個になる。年間稼働率はコロナ前であれば平均で80%以上になる。仮に80%として使用量を計算すると、7万0080個になる。単価200円として年間で1401万6000円になる。

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 アメニティは部屋の清掃時に清掃員が全部チェックして入れ替えていくので労働コストもかかっている。これらを顧客が持参してくれるだけでも負担軽減になるが、環境保護の掛け声を利用して一気に有料化に持っていければ、大きなコスト削減につながるというものだ。

©️iStock.com

 そうした意味から考えると、コロナ禍によって宿泊者減に塗炭の苦しみを味わっているホテルや旅館にとって、4月からの法律施行は大幅なコスト改善ができるチャンスの到来といってよいのだ。

 かように環境保護という名目は、レジ袋有料化がコンビニ業界に多額の利益をもたらしたように、絶対に正しい目標として掲げることで、多くの顧客から堂々とおカネがとれるおいしい素材なのだ。

 コロナ禍によって2年も続く大干ばつ状態のホテル旅館業界にとって、この措置はGo To トラベルに続く「干天の慈雨」といえるものとなるかもしれない。ここは「環境保護」を大声で、いやセクシーに囁いてみるのはいかがだろうか。