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鹿島 四国新聞の社長は平井さんの弟で、平井さんがデジタル大臣になったときは6面も使って報じるぐらい“家族推し“を隠さない新聞なんです。それまで『なぜ君』を完全に黙殺していたのに、この件は大島さんに取材もしないで大きな記事にした(笑)。

大島 小川さんに頼まれて撮ったわけじゃないし、結果としてPRになったかもしれないですが、小川さんの情けないところや、野党のみっともない離合集散もたくさん見せてるんですけどね。

鹿島 小川さんが支持者になじられるシーンもありましたしね。選挙戦ってアピールの戦いですから、「あれはPRで、私たちは被害を被ったんだ」って言いたくもなるんでしょう。

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少人数チームのため監督もカメラを回す

大島 それでも、もっと余裕を持っていて欲しかったですね。……おかげで、映画としては面白くなりましたけど(笑)。 

鹿島 岸田首相が香川入りして応援演説する会場を追い出されたり、平井さんの街頭演説の撮影をスタッフに邪魔されたりしてましたよね。これ、大島さんたちニヤニヤしてるだろうなーと思いました(笑)。「いい画が撮れた!」って。

大島 岸田さんの演説より、追っ払われる方がずっと面白いですからね。ただ、平井さんを気の毒にも思うんですよ。平井さん自身がそんなこと命令してるわけはないから、周りにいる人たちが気を遣ってやってるわけです。権力者として祭り上げられてるんですよね。

映画から生まれた「熱」

鹿島 結果は、開票と同時に小川さんに当確が出て、2万票の大差で平井さんに勝ちました。その結果に『なぜ君』はどれぐらい影響したと思ってますか?

大島 影響はゼロではなかったと思います。でも、どれほどなのかは分からないんですよね。「ドキュメンタリーでは大ヒット」と言っても、観客は全国で3万5000人、香川1区のある高松で5000人程度です。

鹿島 いっぽうの四国新聞は……17万部ですか。

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大島 ただ、映画を見て小川事務所に馳せ参じたという人はいますし、そういう人たちが周りに小川さんの人柄を伝えるとか、そこでなにか「熱」が生じてあの結果に繋がったのかも、とは思います。

鹿島 それも、『なぜ君』がエンターテインメントとして面白かったからだと思うんですよ。小川さんという直情型の主人公が、本当は政策論争をしたいのに、小池百合子の「希望の党」みたいな政局に巻き込まれ、妻や娘を巻き込んでドブ板選挙をし……。