同じくネトフリで配信中の、ゾンビモノの亜種的なモンスター・サバイバルホラー『Sweet Home 俺と世界の絶望』も素敵なキャラがてんこ盛りだ。クリスチャンで元アル中、超強い刀使いの国語教師という「要素特盛」な男ジェホンや、武器使いのおじいちゃんなど、次から次へと魅力的な登場人物が現れる。
ゾンビパンデミックが巻き起こす恐怖と、ゾンビとの交流の両方を描く変わり種ゾンビ映画『感染家族』では、人間のみならずゾンビ側にも魅力的なキャラを用意。とある家族に飼われる青年ゾンビが出てくるのだが、見ているうちに不思議と愛おしくなってくる。
と、こんな感じで、少し例を挙げるだけで字面が埋まってしまいそうなほど、Kゾンビには魅力的なキャラが溢れている。これが人気を呼ぶ大きな要因であることは間違いないだろう。
韓国エンタメらしくゾンビも社会的
Kゾンビの2つ目の魅力は、社会問題を巧みに物語に取り入れる点だ。これはゾンビモノに限らず、韓国のエンタメ全般が得意とするところである。『今、私たちの~』にも、いじめや学歴など学校内の問題にとどまらず、感染区域市民が受ける差別、情報統制などのあらゆる要素が盛り込まれている。
この部分で触れておきたいのが、2010年公開のオムニバスゾンビ映画『隣りのゾンビ The Neighbor Zombie』だ。第5話「その後…ごめんなさい」の、ゾンビから人間に戻った後を描いた物語がとにかく秀逸。
ゾンビだった時に犯してしまった殺人は許されるのか。そして、元ゾンビが受ける差別はどういったものなのか……。そういったアフターゾンビ問題を見事に描き切っている。2020年日本公開のアイルランド・フランス合作映画『CURED キュアード』でも同様のテーマが描かれているが、10年前の本作の方がより踏み込んでおり、かつエンタメとしてもレベルが高い。
他にも、前述した『感染家族』では、ゾンビに噛まれると若返りが起こるという特殊な設定を使って、地方の深刻な高齢化問題に触れている。社会に深く根付く問題を、鼻に付かないよう自然に物語の中に組み込み、表に炙り出しているのである。
それは現代劇だけに留まらない。朝鮮王朝時代を舞台にした陰謀や権力問題にゾンビを絡める展開も韓国作品の十八番だ。Netflix配信の時代劇ゾンビドラマシリーズ『キングダム』では、王亡き後の韓国王朝を襲う混乱と醜い争いに猛ダッシュゾンビの群れをブチ込み、濃密なホラーへと昇華させた。
暴君(チャン・ドンゴン)と王子(ヒョンビン)の対立に、これまたゾンビ(正確には夜鬼)をブチ込んでアクション色強めに味付けした『王宮の夜鬼』という作品も作られている。
いずれも陰謀渦巻く時代劇作品としてハイレベルで、それだけで十分に成り立つほど骨格がしっかりとしている。そこにゾンビを投入することで、より面白さが増す形になっているのが素晴らしい。