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“心臓に悪い”動きのインパクト

 そして最後に、他国のゾンビ作品と比べてKゾンビが優れていると感じるのは、ゾンビの動きの良さだ。

 まず、韓国のゾンビはそのほとんどがメチャクチャ速い。2012年に公開されたオムニバス・ホラー映画『ホラー・ストーリーズ』の一編「救急車」では、猛ダッシュで救急車に迫り、側面にしがみつくアグレッシブなゾンビが堪能できる。

ホラー・ストーリーズ』2014年(109分)/アルバトロス/5280円(税込)

『新感染~』では勢いが良すぎて「ゾンビ雪崩」になり、続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』では「ゾンビ滝」に進化した。『今、私たちの~』のゾンビも、高速かつ縦横無尽の大暴れで学校を一瞬で地獄絵図にする。校舎の窓という窓からゾンビが投身するシーンは前半のハイライトだ。猛ダッシュゾンビは今ではよく見かけるタイプではあるが、流石にここまで無茶苦茶な走り込みをしてくる姿はなかなか拝めない。

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 ゾンビの振り付けにも相当な力が入っている。特に、虫や軟体生物のような動きは強烈なインパクトを与えてくれる。それまで地面に倒れていたゾンビが、いきなり「グオンッ!」と体を捩じりながら起き上がるシーンはいろいろなKゾンビ作品で観られるが、あれは何度見ても心臓に悪い。

 実はこの動きは、日本製作のゾンビ映画『アイアムアヒーロー』からの影響が大きい。この作品では、ゾンビに人体の構成を無視した捩じりや這いまわるような動きを与えて、凄まじいインパクトを生み出した。そしてそれが『新感染~』のメチャクチャな動きをするゾンビにつながっていく。『新感染~』から新たな影響を及ぼし、様々なKゾンビムービーが生み出される。今のKゾンビの発展には、日本の功績も少なからずあると言えるだろう。 

アイアムアヒーロー』2016年(127分)/エイベックス・ピクチャーズ/4180円(税込)

 また、『新感染~』以降、街や国全体が感染拡大で崩壊するスペクタクル描写も目立ってきた。『ワールド・ウォーZ』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』などのようなハリウッド作品に負けないレベルの壮大なパニック映像が、映画だけでなくドラマシリーズでも当たり前のように見られるようになった。今やKゾンビは、世界に通じるレベルにまで達している。

 ここ数年で、韓国のゾンビ作品が凄まじい勢いで発展を遂げている。魅力的なキャラ、ハイレベルなストーリーテリング、ド級のスペクタクル。これらが欠けることなく作品を完成させるのは難しい。ゾンビ大国アメリカですら完成度の高い作品はそう多くない。

『今、私たちの学校は…』 ©AFLO

 だが、Kゾンビは多くの作品で全てを網羅している。全体的なレベルが非常に高い。それがKゾンビがここまで勢い付いている最大の要因だろう。そして今年配信開始となった『今、私たちの~』は、これまでにKゾンビが培ってきたものを全て盛り込んだ、まさに集大成的作品となっている。

 一作ごとに新鮮な驚きを与えてくれるKゾンビから、これからも目が離せない。韓国がゾンビで覇権を取る日は近いだろう。あるいはもう……。