大家の発言を受けて、渡辺さんは全身が総毛立つのを感じた。そこで思わず「どうして勝手に部屋に入って排水口を掃除したんですか?」と不信感を顕にすると「だって排水口が詰まったら大変でしょ! お礼を言ってほしいくらいだ!」と逆ギレ。激昂したまま、彼は自室に戻っていったという。
「もう、何がなんだかわからなかったです。さすがに自分に対する異常な執着を感じたので、うぬぼれではないと思います。職場の人にその話をしたら『そんなところは早く出たほうがいい。大家といえど不法侵入になるのでは』と言われ、目が覚めました」
退去の決意を固め、口頭でそのことを告げると「あ、そう」と冷淡に返されたという。そんな大家の態度の急変ぶりにも、心当たりがあった、と渡辺さん。
「私が退去を申し出る少し前に、若い女性がもうひとり入居してきたんですよね。もしかしたら彼は、そのときすでに私からその女性にターゲットを変えていたのかもしれません」
家賃の安さで家を選ぶとひどい目に遭うことも
渡辺さんによると、大家の男性は独身で物件の管理や掃除などもすべてひとりで行っていた。渡辺さんは「周囲に彼の暴走を止める人もいなそうだった」と振り返る。
「退去の立ち会いをしているときも『前はこんなところに穴はなかった』『修理費すごくかかっちゃうな~、どうしようかな~』とネチネチ言ってきました。でも私は1年も住んでいなかったし、汚すような生活もしていないし、当然、壁に穴なんて開けていません。
敷金を返してもらいたかったけど、そこでまた揉めるのがイヤだったので、結局敷金の戻りはなし。泣き寝入りをした経験から、家賃の安さで家を選ぶとひどい目に遭うことを学びましたね……」
彼女は「短期間で引越しが続いて結局お金がかかってしまい、本当にさんざんな経験だった」とため息をついた。現在渡辺さんは、大家が物件に住んでいないマンションに移り住み、ストレスフリーな生活を送っているという。
安かろう悪かろう、という側面もあるかもしれないが、たとえ家賃が安くとも大家が無断で借り主の部屋に入る理由にはならない。賃貸物件を選ぶ際には“大家の特徴”も、重要事項に加える必要がありそうだ。