国内最大の暴力団である6代目山口組が分裂して、今年で8年目を迎えた。

 分裂以降、拳銃を使った殺人事件や乱闘騒ぎ、事務所への大型ダンプをバックさせての突入など、これまで約90件の対立抗争事件が発生し、8人が死亡している。双方の組織内でさらなる離脱や移籍をめぐる内輪もめのような事件も多数発生しており、こうした事件を含めると100件以上の事件が発生し、十数人が死亡しているものとみられる。

6代目山口組の司忍組長 ©時事通信社

厳しい行動制限下に置かれる「特定抗争指定暴力団」

 2つの組織の間で続発した対立抗争事件を抑え込もうと、兵庫県公安委員会などは両組織を2020年1月に「特定抗争指定暴力団」に指定した。

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 特定抗争指定暴力団とは、暴力団対策法で指定された指定暴力団の間で、拳銃の発砲などの事件が引き起こされ、その報復として双方の間で複数回の事件が繰り返し起きて対立抗争状態にあると認定された場合に指定される。

 当初は、双方の拠点が数多くある大阪市や6代目山口組の中核組織、弘道会の拠点がある名古屋市、神戸山口組傘下(当時)だった山健組の事務所がある神戸市など、関西や東海地方を中心に6府県、10市が警戒区域として設定された。

山口組弘道会本部で「特定抗争指定暴力団」に指定されたことを示す標章を貼る愛知県警の捜査員 ©時事通信社

 その後、事件が起きるたびに警戒区域が追加され、一時期は10府県、20市町にまで増えた。ただ、神戸山口組の主要組織だった岡山市に拠点がある池田組が脱退したため、岡山県公安委員会が2021年10月に同市を除外するなど、現在の警戒区域は9府県17市町となっている。

 特定抗争指定暴力団に指定されると、構成員らは警戒区域内で、5人以上で集まると即座に逮捕されるなど厳しい規制下に置かれる。他にも組事務所への立ち入りや、対立する組事務所周辺をうろつく行為などが禁止され、違反した場合には中止命令などを経ずに即座に逮捕できることとなっている。

 そのため、6代目山口組、神戸山口組双方の組員は現在、行動を極端に制限されている。不要な逮捕を免れるため、「移動の際などにはとにかく気を使う」(6代目山口組系幹部)と神経質にならざるを得ない状態が続いている。