三谷幸喜脚本、小栗旬主演で現在放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。

 主演の小栗をはじめ、ドラマや映画の主役クラスのそうそうたる俳優たちが集結し、毎週、堂々とした演技を披露する中、ひときわ存在感を放っているのが源頼朝役の大泉洋だ。

 物語はまだ序盤だが、小栗演じる北条義時ら武士たちが織りなす壮大な歴史絵巻の中、やがて鎌倉幕府を立ち上げ征夷大将軍となる源頼朝は全編を通じて常にストーリーの中心にいるキーマンであり、いわばもう1人の主人公とも言える。

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『鎌倉殿の13人』(番組公式サイトより)

 しかしながら、元妻・八重(新垣結衣)が忘れられずこっそり逢いに行ったり、眼力がものスゴい義時の姉・政子(小池栄子)を娶ったかと思えば、遠征先で出会った漁師の妻・亀(江口のりこ)にちゃっかり手を出したりと、「この後、本当に鎌倉幕府を立ち上げる人物なのか?」と疑いたくなるほどの奔放さで、三谷脚本の妙とも相まってペーソスあふれる非常に人間くさいキャラクターとして描かれている。

 大泉も“ぼやき芸”を得意とするだけあり、後ろ向きで自信なさげな、それでいて何か企んでいるような表情が魅力の一つでもある。もっとも、歴史上の人物なので本当のところは誰にもわからないのだが、「頼朝ってこんな人だったんだろうな」と思わせる妙な説得力が大泉にはあるのだ。

人間味あふれるキャラクターを体現する大泉洋

 たとえば第4話「矢のゆくえ」では、一緒に戦をする兵を集めるために「おまえだけが頼りだ」と、会うたび全員にそれぞれ同じことを言って説得するシーンがある。まさに大泉洋の真骨頂とも言えるコミカルな芝居が炸裂で、思い通りに行かなかった時に見せる表情がまた絶妙で笑いを誘う。

 一方で、ひとたび戦や政治的決断のスイッチが入った時の彼の表情はすこぶる格好いい。その緩急のバランスが見事で、三谷脚本は彼の活かし方を十分に理解していると言える。

大泉洋演じる源頼朝 『鎌倉殿の13人』番組公式サイトより

 普段は何を考えているかよくわからない、とぼけた雰囲気を醸し出している大泉頼朝だが、ぼやきながらもやることはやる(いろいろな意味で)。そこがなんとも人間味にあふれている。俳優として大河ドラマに出演するだけでも充分立派なことだが、そう感じさせない、良い意味での彼の親しみやすさがキャラクターの魅力をさらに増幅しているのだ。