2時間ドラマの元祖『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日系)が始まってから、45年近くが経過した。推理もの一辺倒で“ワンパターン”と揶揄された“土ワイ”だが、過去の作品を遡ってみると、推理もの一辺倒だったわけでも、話がワンパターンだったわけでもないのだ。
ここでは、阪南大学教授の大野茂氏が、2時間ドラマの軌跡を追った著書『2時間ドラマ 40年の軌跡 増補版』から一部を抜粋。2000年代に2時間ドラマのリニューアルが進んだ背景や、当時の主演俳優の変遷などを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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看板番組で主役交代
老舗の土ワイでは看板番組のリニューアルが進んでいた。最多の作品数を誇る『西村京太郎トラベルミステリー』で、十津川警部役を三橋達也(当時76歳)から高橋英樹(当時56歳)へと交代した。平均視聴率は19・96%と安定した人気を保っている今こそ、若返りを図りたい。そう考えたのは塙淳一プロデューサーである。
それまでは、三橋の年齢も考慮して、十津川は主に本部で指揮、コンビの亀井刑事(愛川欽也)は現場へ、と分けていた。しかし、シリーズ34作目を迎え、亀井役の愛川も齢66(当時)に。「カメさん1人で動くのも大変だろう」と、塙は十津川を行動的なキャラクターに生まれ変わらせることにした。そこで満を持しての登場が高橋英樹である。
実は、10年前に1度、高橋は十津川警部を演じたことがあった。テレ朝が火曜夜8時に放送していた、『火曜ミステリー劇場』である。1990年7月17日に放送の『十津川警部の挑戦』で、相方の亀井刑事役は、なんと!いかりや長介だった。奇しくも高橋英樹は当時の取材会見で「視点を変えたり、役者が変われば、全く違う刑事ドラマになる」と意味深長な言葉を残している。
新・十津川の高橋は出番が少ないどころか、亀井の愛川と一緒に移動する場面もかなり増えた。それにより全体のテンポもかなりアップ、番組自体も若返った。
今まではあまり描かれなかった2人の心の交流にもスポットが当てられ、小料理屋の女将(後に十津川の妻)として浅野ゆう子も新たにレギュラーに加わった。