一方、火サスでも21世紀に入り、シリーズのあり方に新機軸を打ち出した。テーマに「老人・心・自然」の3つを考えて、新しいキャラクターに介護福祉士、臨床心理士、自然保護観察官が投入された。
ジャニーズ事務所から松岡昌宏、長瀬智也を新キャスティング
もちろん、土ワイがいささか突飛なストーリー設定ばかりになった訳ではない。娯楽色が濃い作風のABCでもハードボイルドが作られている。仲村トオル主演による一連の作品群『刑事殺し』シリーズと『棘の街』である。
ABCのプロデューサーは森山浩一、制作はテレパックであるが、例外的に監督にもABCの社員だった内片輝が抜擢された。
2人とも山内久司のテレビイズムを継ぐ者たちである。人間の根底に潜む、隠された感情を浮き彫りにする演出はテレビ業界で注目の的になった。こののち、内片はABCを退社し独立、『相棒』の演出でその手腕を発揮することになった。
東京・テレビ朝日でも、意外な形での合同捜査が行われようとしていた。『牟田刑事官』と『終着駅』の2つの人気シリーズを合体させようというのだ。
年末年始のドラマは、他局に競合相手が多く、視聴率も苦戦を強いられる。その対策に、人気の「刑事官」と「終着駅」の2つをシリーズの垣根を取り払って、1つのドラマに統合する、今までにない企画である。
2つのシリーズは原作者が異なり(石沢英太郎と森村誠一)、制作会社(C・A・Lと東映)も異なる。合体に伴って権利処理や制作費分担など様々な障害が立ちはだかったが、脚本をどちらも岡本克己が手がけていたこともあり、出演者も納得して合体が成立した。
01年12月29日に『牟田刑事官VS終着駅の牛尾刑事』が放送され、16・7%を記録。後に『事件記者冴子』も加わって、毎年末の恒例企画として10年以上も続いた。
また土ワイでは、江戸川乱歩と横溝正史が生んだ二大探偵キャラクターを共演させる試みもした。『明智小五郎VS金田一耕助・世紀の名探偵推理対決!炎の不可能密室殺人!?妖しい傷跡の美女』(05年2月26日)という特別企画である。
若い年代の視聴者を獲得するため、ジャニーズ事務所のTOKIOから明智役に松岡昌宏、金田一役に長瀬智也を新キャスティング。視聴率は14・3%だった。