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2022/03/29

 松本が『相棒』と出会う以前、当時制作局長だった関口恭司は、ドラマ作りに悩める若き日の松本の姿を目の当たりにしている。

「彼はとにかく研究熱心でしたね。うまくいかないときに、この台本のいったいどこが悪いんでしょう、どうすればいいでしょう、とよく聞きに来てましたよ」

グルメ刑事・ハードボイルド・合同捜査などの作品が登場

 リアルさを重視する一方で、気楽に見られるエンタメ路線のシリーズも必要だ。御都合主義との批判もあるが、「捜査ができる人ばかりを主役にすりゃぁ良いってもんじゃない」とばかりに土ワイでは、タクシー運転手、すし職人、渡り番頭、デパート店員など素人探偵が活躍する作品も少なくない。中でも、大阪ABC制作のシリーズには、ひときわユニークなものが多い。

 浜木綿子が武術の達人の尼さんを演じた『尼さん探偵』、叶和貴子や萬田久子らが歴代主役の『美人スリ三姉妹』シリーズ。刑事も並みの刑事ではない。無類のラーメン好きの刑事が、全国のラーメン名所で起きる事件を解決するシリーズ『ラーメン刑事』(主演・神田正輝)もある。制作はやっぱり大映テレビだ。

神田正輝 ©文藝春秋

 それに対し、火曜サスペンス劇場のプロデューサー長富忠裕は「さすがに火サスにはその発想はなかったですね。たとえば、『鬼貫八郎』は甘いものを盗み食いはするけど、そこがメインじゃない。あくまでもストーリーがあって、ちょっと主人公のキャラクターを補足するための描写。ことさらそこを強調して、鬼貫八郎に“スイーツ刑事”みたいな名前はつけないわけです」と言う。

 しかし、そうした土ワイのトライアルの中から、長期シリーズも生まれた。引退した元刑事が謎解きをする、渡瀬恒彦の『タクシードライバーの推理日誌』は39作ものロングドライブ。

 温泉を舞台にした素人探偵も根強い人気で、テレ朝は『温泉若おかみの殺人推理』、ABCは『温泉㊙大作戦』と土ワイ東西で温泉シリーズが作られている。グルメ刑事として、内田康夫原作、食レポでおなじみ石塚英彦が演じるフグハラ体型の『福原警部』も現れた。

 また、火サスと比べて土ワイは開始から15年ほどは女性弁護士が1人いるのみで(あとは覗くだけの家政婦が1人)、ほかは男が主人公のシリーズばかりだったため、法医学医師(名取裕子)、鉄道警察官(沢口靖子)、記者(水野真紀)、検事(眞野あずさ)、そして100の資格を持つ女(渡辺えり)と女性の活躍するドラマを94年から漸次増やしてきた。

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