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 プロデューサーの塙は、当時の取材で「2人とも行動的になったが、カメさんは従来通り人情の人、高橋さんには巨悪に立ち向かう役割を割り振りたい。警察の縄張り意識の弊害なども描いていく」とコメントしている。

土ワイが生んだ歴史的刑事ドラマ

 土ワイのプロデューサー・松本基弘は追い詰められていた…といっても、原因は自分自身にある。担当していた水谷豊主演のシリーズ『探偵事務所』が打ち止めに。水谷に代わりの企画を出すと約束したものの、妙案はない。

 困ったなと思っていたある日、明石家さんま主演のコメディー『恋のバカンス』をたまたま見て閃いた。この脚本のセンスと、土ワイに蓄積されたノウハウを組み合わせたら、今までにない面白さが生まれるのではないか。

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 松本はエンドロールを見てさっそく輿水泰弘に連絡したが、第一声は「なんで僕なんかにサスペンスを?」だった。予定も1年先まで埋まっているとのこと。それでも輿水の台本を諦めきれず、水谷に相談したところ、「OK、待つよ」の返事がもらえた。

 脚本の輿水、監督の和泉聖司、プロデューサーの松本で基本設定が組まれた。まず、男2人の刑事もの、それも所轄ではなく、警視庁を舞台にする。水谷が演じる主人公は、拳銃は撃たず、理論だけを武器に犯人を追い込む。リアリティー重視で、警察組織の内部事情も描く。

 今日的なテーマを扱うため、主人公の所属は特命係。松本は『事件』シリーズや『死刑囚・永山則夫と母』などの犯罪実録ものを担当していた。松本たちの狙い通り、土ワイの過去の蓄積と、土ワイへのアンチテーゼが融合した。『相棒』の誕生である。

ドラマ『相棒Season20』(テレビ朝日系)公式HPより

 社内試写では、これでは数字が取れないとの声も出たが、2000年6月3日放送の第1作『警視庁ふたりだけの特命係』の結果は、17・7%。翌年1月27日の第2作は22・0%。同年11月10日の第3作は17・4%。この実績が買われ、『相棒』の主人公2人に、土ワイから連続ドラマへの2002年付の人事異動が出たのだった。