役員男性に激しい嫌がらせされ、退職せざるを得ない状況に
他にも枚挙にいとまがないのだけれど、女性社員はそもそも「結婚したら会社を辞める存在」として扱われていたために、管理職に就くことも許されていなければ、せっかく成果をあげても、それをことごとく男性社員の手柄にされてしまう。女性に任されているのはお茶汲みや、上司・取引先の機嫌取りのために出席させられる飲み会でのお酌、ゴミ捨て、細々とした雑務と、化粧をして出社することだった。
「東京観光に連れてってあげる」と言った役員の男は、13人いる新入社員のうち、地方出身だった私と、もう1人の女性社員だけに終業後に車に乗るよう促し、ジャニーズがお忍びで訪れるというバーの個室で「他の社員には内緒」の旅行に行こうと持ちかけた。私と一緒に呼ばれた女性社員が役員男性の協力者だったことは、そのとき初めて知った。
役員の男性は既婚者で、配偶者も社内にいる。しかし拒否権は与えられていないも同然で、こちらの表情が曇ったのを確認した役員男性は、途端に高圧的な態度に豹変して「行くか行かねえのか聞いてんだよ」と語気を荒くした。逃げ場もなく恐怖で泣き出しそうになりつつも、これ以上この男を怒らせると何をされるかわからないということだけは理解できたので、ひとまず「行きます」と返事をして、その日は解放してもらうことに成功した。
後日、先輩に相談して断りの連絡を入れたところ、社内で激しい嫌がらせが始まって、会社を退職せざるを得ない状況まで追い込まれてしまった。役員男性は会長の息子であり、誰も逆らうことができないようだった。まさか、社会的立場もある「立派な大人」が、こんなに幼稚で下衆で卑劣な行為を堂々と行うなんて、このときまで思わなかった。
正すべきは、加害を生んでしまう閉鎖的な業界構造
映画監督の榊英雄氏から性的行為を強要されたとして、複数の女性俳優から被害を訴える声が上がった。権力を持つ立場の人間から、乱暴に暗がりに連れ込まれて性行為を強要されたり、業界を干されてしまうかもしれないと、呼び出しに応じざるを得なかった女性たちの恐怖はいかほどだったかと思う。一連の告発が報じられたあと新たに、榊氏から被害を受けた女性俳優からの訴えがさらに複数件上がった。