世界中から注目を浴びる韓国映画やドラマだが、演じる俳優たちの演技力も大きく評価されている。『ミナリ』でおちゃめなお婆さんを演じたユン・ヨジョンは2021年のアカデミー賞助演女優賞に選ばれた。

 また、ゴールデングローブ賞は今年、55年間も無名俳優だったオ・ヨンスに助演男優賞を与えている。そこで、いま世界が注目している韓国人俳優からファン・ジョンミンをピックアップし、その実力に迫った。

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 韓国映画界を代表する俳優を語る時、「ファン・ジョンミン」という名前は欠かせない。彼は今まで計40本余りの映画に出演し、主演作品だけで累計1億人を超える観客を動員した韓国最高の興行俳優だ。近年日本でも公開された『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』ではイ・ソンミンとの共演が話題になりヒットした。

 映画評論家のチェ・グァンヒ氏は、ファン・ジョンミンのチケットパワーについて次のように説明する。

ファン・ジョンミン ©AFLO

「観客は監督やストーリーではなくファン・ジョンミンを見るために彼の映画を選ぶ。映画が徹底的に監督の力量に左右される韓国映画界で、ファン・ジョンミンは自分の印章を映画に押せる数少ない俳優だ。映画に対する、そして芝居に対する開放的で謙虚な姿勢も観客に大きくアピールしている」

 1990年、林権澤(イム・グォンテク)監督の映画『将軍の息子』で端役デビュー後、長い無名生活を経験したファン・ジョンミンが映画界に名を馳せた映画は、低予算映画『ロードムービー』(2002)だ。

 ファン・ジョンミンは男を愛するホームレス役を演じたが、役作りのために、ソウルの路上で1週間も生活をしながらホームレスを観察した。演技に対するストレスで全身にじんま疹が出るほど大変な映画だったが、この映画で彼は「青龍映画祭」の新人賞を受賞した。