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私が岡田将生に強い印象を抱いたのはもう一点あった。演じた役柄はどうしてもある俳優を思い出してしまうからだ。
それは、東出昌大である。
高槻(岡田将生)は常に観客の心をざわざわさせた。家福(西島秀俊)は広島国際演劇祭から「ワーニャ伯父さん」の演出を依頼されるのだが、アジア各国から集まった俳優の応募書類に目を通すと、かつて妻から紹介された高槻の写真を見つける。高槻はどうやら亡き妻といろいろ関係があった模様。その男が広島にやってくる。ざわざわ……。
「高槻」に重なる東出昌大の実人生
映画を観ていておやっと思ったのは、高槻はすでに著名なスターらしいこと。広島では一般人のスマホでの隠し撮りにイライラしている。さらに高槻は以前に女性スキャンダルを起こして世間に大騒ぎされた過去があるようなのだ。
あれ、これって……。
このあたりから私の頭には東出昌大の姿がチラついた。長身で演技論は冗舌で、でも実際はダメ出しされるのが多くて、私生活はどこか脇が甘い。これではまるで東出君じゃないかとスクリーンを観ながら私は一人騒然としていた。
東出昌大は濱口竜介監督の過去作品「寝ても覚めても」(2018)に出演している。接点がある。だからすぐ浮かんだ。
「高槻(岡田将生)=東出昌大」という見立ては映画を観た人なら思いついたかもしれない。しかし驚くのは映画公開後の東出昌大の動きなのである。