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東京を脱出したファミリー層が、鎌倉ではなく“湘南・藤沢”を選ぶワケ

10年後には東海道線の駅が3つも存在することに

2022/04/05
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東京から脱出を始めた傾向が如実に表れた地価公示

 これはコロナ禍が収束しても、元の就業形態にもどるのではなく、より効率が良く、生産性が上がり、従業員の健康にも資するものとしてそのまま継続させてもよいのではないか、こうした新しい考え、認識が広がってきているのである。

 その結果としてオフィスを解約する動きが顕著になり、オフィスは企画や営業など打合せを行う場としてその役割を縮小させている。昨今における相次ぐ大型テナントの縮小・解約や本社ビルの売却などがその流れを象徴するものとなっている。

 こうした考え方は、オフィスに通勤することを当たり前と考えてきたオフィスワーカーに、住む場所である家の選択肢を大いに広げることにつながった。東京都ですら21年は転入超がわずか5,433人で前年比8割の減少、都区部に限れば14,828人の転出超を記録した。人々が東京から脱出を始めた傾向が如実に表れたのが今回の地価公示なのである。

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地方よりも周辺エリア 注目されている神奈川県・藤沢市

 彼らが向かうのは、一部で期待されたような地方移住というよりも周辺3県に山梨、茨城を加えた周辺エリアだ。

 なかでも注目されるのが神奈川県藤沢市だ。2021年における人口動態をみると、藤沢市は4,554人の転入超を記録しているが、この数値は県内では横浜市(10,123人)に次いで県内2位(全国8位)である。また14歳以下人口に限れば、708人の転入超で県内1位(全国7位)、つまり多くの子育て世帯が転入しているさまがみてとれる。

藤沢駅から小田急江ノ島線で南に行くと、片瀬江ノ島だ(著者提供)

 人口も急増、42年前の1980年、藤沢市の人口は約30万人だったが現在は44万1500人。この期間中に47%も増えたことになる。以前は神奈川県では横浜市、川崎市、相模原市に次ぐ人口を誇ったのが横須賀市であったが、近年横須賀市は人口40万人を切って38万人台にまで落ち込んでいる。県内で同じように海を擁する風光明媚な土地にあって、藤沢市の一人勝ちが目立つ。

 藤沢市の優位性を上げてみよう。テレワークを中心とした働き方が普及しても、やはり都心部に全く通勤しないですむ業種や職種はいまだ限られる。週1回、あるいは月2、3回の通勤が必要であるのが現実だ。また他県や海外などへのアクセスを考えると、東京や新幹線、空港などへのアクセスも一定程度は確保したい。その点藤沢市は交通利便性という観点からも評価が高い。