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「すごい名勝負でした」若隆景が初優勝! 最後の勝敗を分けた“経験の差”とは《“元安美錦”安治川親方の3月場所総評》

けっぱれ! 大相撲――2022年3月場所

note

 カド番で大阪場所を迎える大関貴景勝と正代。厳しい戦いになるが、特に心配はしておらず優勝戦線に絡んでほしいと思っていました。

 他には関西出身の「ご当所力士」と呼ばれる力士が久しぶりの大阪場所を盛り上げてくれるのではとみていました。大阪出身の豪栄道、勢の引退後はこの人しかいないでしょう。宇良ですね。隣の兵庫県出身である貴景勝、妙義龍。やはり地元ということで応援にも力が入ります。1人忘れていました。淡路島出身の照強。私は淡路島出身の照強より“淡路島牛乳”が好きですけれど(笑)。

見事なスタートを切った照ノ富士と御嶽海

 それでは本場所を振り返っていきましょう。

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 初日、照ノ富士は新小結として急成長著しい豊昇龍。力をつけてきた若手にどんな相撲を取るかみていました。しかしそこはさすがの横綱。

 立ち合いを組み止めると胸を合わせ一気に寄り切り。まったく問題にしません。

 新大関の御嶽海は200キロを超える巨漢逸ノ城を、緻密に計算された相撲で攻め手を出させずに完勝。新大関の初日、緊張を全く感じさせずに落ち着いていました。

 今場所もこの2人が引っ張っていく展開になると感じさせる、見事な相撲でした。

 ご当所大関貴景勝は、同じくご当所宇良との対戦です。宇良を相手に貴景勝は何もさせずに立ち合いからの一気の攻め。これぞ貴景勝と思わせる相撲に、カド番大関の不安はありませんでした。かたや大関正代は大栄翔になすすべなく完敗、正直、不安でした。

 新関脇の若隆景は良い相撲でしたね。体のハリ、ツヤも申し分ない。先場所から一回り筋肉が大きくなったようにも見えました。37歳の玉鷲も体のハリでは負けていません。立ち合いは玉鷲が頭から激しく当たり一気に押していきます。しかし玉鷲の怒涛の攻めにも若隆景の構える角度が変わりません。頭で当たり、押してきたところを上手く横からいなして突き落とし。

 阿炎は阿武咲を突き切れず、逆に攻め込まれての黒星。対極にあるような結果になりましたが、まだ初日です。初日の相撲をみて好調と感じたのは、琴ノ若に髙安、霧馬山に翔猿です。負けはしましたが若元春が力をつけてきたなという印象でした。

2日目に波乱が!!

 上位陣が引っ張っていく展開かと思われましたが、なんと2日目に波乱が!!

 横綱照ノ富士が、毎場所熱戦を繰り広げる大栄翔にのど輪で起こされ、横から攻められ送り出しで黒星。大栄翔は嬉しい金星です。

 貴景勝と正代も相次いで敗れました。

 御嶽海、若隆景は万全の相撲で連勝です。この2人の相撲は群を抜いていい相撲でした。

 荒れる春場所と言われていますが、今場所も大きく荒れそうな予感がしてきました。