3月は大阪での開催。「荒れる春場所」と言われ混戦になることが多い春場所です。

 今場所も私、安治川が振り返っていきたいと思います。

 大阪というと活気溢れる土地柄で、応援にも熱が入ります。大阪府立体育会館は観客と力士の間隔が近く、花道も国技館と違い通路になっています。その分応援も耳に入ります。現役時代の私は、お客様の話し声まで聞こえることで緊張感がほぐれ、リラックスして相撲が取れました。

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 また、大阪といえば美味しい食べ物がいっぱいあります。焼肉に寿司、魚に粉もの、何を食べても美味しいです。そしてお酒も格別に美味しいですし、こっちも大好きです。

 先場所同様外出制限があり、外食はできませんが大阪に来るだけで気分も上がります。

 さて、先の初場所で活躍した力士を中心に見ていきましょう。

今場所、注目していた力士は……

 まずは先場所優勝で新大関に昇進した御嶽海。結婚も発表し良いこと尽くしでお母さんのマルガリータさんもさぞ喜んでいることでしょう。

 今場所も新大関の勢いそのままに連続優勝も期待できるのでは、とみていました。

 横綱照ノ富士は先場所痛めたところの治療に専念し、逆襲を胸に誓っていました。

元安美錦(安治川親方) ©文藝春秋

 しかし、2月にコロナ感染が発覚します。

 横綱はじめ御嶽海、正代など感染者が増加し、相撲部屋でも感染者が増えて大変な状況になりました。私も感染してしまいました。幸いにも症状はありませんでしたが、陰性になってから、倦怠感などがありました。

「これは体が資本の力士達にとって厳しいのではないか」と感じたものです。

関西出身の「ご当所力士」も

 伊勢ヶ濱部屋でも感染したために稽古ができない状況がしばらく続きました。

 稽古ができるようになると、休んだ体に鞭を打ち急ピッチで稽古量を増やしていきました。

 今場所新十両の熱海富士が稽古に活気を与え、十両の錦富士や翠富士、ベテランの宝富士と横綱が熱のこもった稽古を繰り広げていました。他の力士たちの情報があまり入ってこないため、どのような場所になるか開けてみないとわかりません(汗)。

 注目としては新関脇の若隆景と阿炎。2場所連続で優勝に絡んだ阿炎の昇進を家族も喜んでいるでしょう。若隆景は3人兄弟で皆力士。父、祖父も力士で親子3代力士という相撲一家。福島出身でさぞ地元は盛り上がっていることでしょう。

 私が関脇に昇進したとき、朝赤龍(現高砂親方)も新関脇で同じ状況でした。「絶対先に負けるものか!」と相手が思っていたかはさておき、お互い連勝でその場所を盛り上げた記憶があります。今回も相乗効果があるのでは、と推察していました。