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 5日目、横綱照ノ富士は、先場所負けている37歳の玉鷲に黒星。玉鷲は2場所連続の金星と、金星獲得年齢の記録で“歴代5位の安美錦”を抜きました。先場所、抜かれずほっと胸を撫でおろしたのもつかの間、抜かれてしまいましたねぇ。

 記録は抜かれるためにあるのです。抜かれた時に名前を思い出してもらえるだけでいいのです。玉鷲お見事、あっぱれ!!

苦しい土俵が続いた正代

 次の日から照ノ富士は休場です。足の状態や体調も万全ではなかったですが、土俵に上がった以上結果が求められるのが横綱です。しっかり治して来場所頑張ってくれると思います。

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 正代も苦しい土俵が続きます。初日から4連敗で中日を終えて3勝5敗の成績です。しかしこの正代が今場所のキーマンになろうとは、この時点ではまったく想像できませんでした。

 中日を終えて貴景勝は6勝2敗、御嶽海と若隆景と琴ノ若が7勝1敗、先頭を走るのは元大関髙安が全勝で突っ走ります。

 面白い展開ですね!!!

 私が新関脇の時の話を少ししましょう。新関脇で初日から8連勝。中日を終えて単独トップで後半戦に臨みました。このようなことは初めてで、毎日ワクワクして、よい緊張感を保ち、まるで“大間のマグロ”を取りにいく漁師のような気持ちで毎日が過ぎていったのを思い出します。

髙安も敗れ、全勝がいなくなる

 さて、優勝候補筆頭と思われた御嶽海は10日目に2敗目を喫します。

 11日目に組まれた全勝髙安と1敗若隆景、カド番脱出にあと1番とした貴景勝と1敗の琴ノ若。これは埼玉栄高校の先輩後輩対決で、優勝争いの行方に直結してくる対戦でした。

 まずは貴景勝対琴ノ若。琴ノ若が立ち合いで右に動いて貴景勝をいなし、一気呵成に出てくるところを、貴景勝が左からの突き落としで勝利して勝ち越しを決めました。

 琴ノ若が立ち合いで張り手を繰り出したことで貴景勝はカッとしたのか、花道の通路をこぶしでガツンと。褒められたことではないですが、そのぐらい気合が入っていたのでしょう。

 注目の髙安対若隆景戦は、髙安の攻めを若隆景が下からの「おっつけ」で相手の上体を起こします。この「おっつけ」が若隆景の武器です。両腕を差し、もろ差しとなり体を密着させ寄っていき、若隆景の勝利。全勝の髙安を引きずり下ろします。

 相手が押してきても、若隆景の上半身の角度が変わりません。構えがとても良いのです。理想的な角度を保つ体幹の強さや腰の低さ、足の運びなどは見ていて唸るほど。今場所の若隆景はすごかったです。まるでオリンピックを3連覇した柔道の野村忠宏さんの一本背負いのように、教科書に載せてもよいぐらい理想的な形だと思いました。

 これで全勝がいなくなりました。