「クリミア併合以来、ウクライナ東部のドンバス地方の2州もロシア軍が実効支配しているという不安定な情勢でした。取材を通じて話を聞いていても、ドンバス地方に関してはかなり緊迫している様子があって。そのため東部に関しては、遠からず何らかの動きは起こるだろうとは思っていました。ですが、まさか首都まで攻撃するとは……という感じです。正直、ニュースを見た時は『えっ⁉』と驚きでした。
「地政学」の及ばない“一個人の判断”で国際情勢が一変
作品中で主人公の百合は、紛争に関わる各国の人々の政治観や思想、宗教などをうまく利用して、地政学という武器で問題を解決しています。ところが今、プーチン大統領は『痴呆が始まった』と噂されるくらい、誰もがその行動原理を読めない状況です。本来、国と国の間にある色んなしがらみや搦め手を吹き飛ばして、一個人が国際情勢を一変させる判断を下せるのだと思うと、恐ろしさも感じましたね」
誰もが予想していなかった首都キエフへの攻撃――。
日本であれば東京の町が戦場となる事態に等しいが、どんな状況なのかは感覚的になかなか想像できない。平和だったころにキエフ市民の生の声を聞いていた田さんは、市民生活の激変をこう想像する。
「朝起きたら目のまえが突然、瓦礫の山になってしまっていたような状況だと思います。前述のように取材時もドンバス地方の情勢が不安定なことは皆さん承知していました。逆に言えば、それがウクライナの日常だったんですね。緊迫しているとは言われていたけれど、まさかここまで攻めてこないだろう……という。ドンバスまでならグレーゾーンで平和維持などいい訳が立ちますが、キエフ侵攻は明確な侵略行為です」
もし日本の安倍晋三元首相が現役なら…?
ロシア軍の侵攻により、ウクライナでは300万人以上の難民が発生し、東部の都市マリウポリでは5000人以上の民間人が亡くなったと報道されている。
世界中が終戦を望む今、もし漫画の世界で八田百合が今回の件の解決に乗り出すとするならば、彼女はどうするのだろうか?
「正直、先ほども述べたように今回のロシアの侵攻はシステムのエラーではなく、“プーチン個人”によるところが大きい。なので、そういう意味では百合を放り込んで地政学を活用しても、なかなか活躍することが難しいとは思います。