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中村牧師が好きな「社会から忌み嫌われる男・ザアカイ」を救う話

 聖書にはこうしたイエスと罪人の出会いの挿話が溢れている。

 中村牧師が最も気に入っている話の1つが、当時社会から忌み嫌われていた徴税人・ザアカイを救う話だ。

©️文藝春秋

「ザアカイは強欲な金持ちで嫌われていましたが、イエス様はわざわざ彼の家に赴き、飲み食いして大騒ぎした。その後、ザアカイは自分の財産を貧しい人々に与えることを約束し、立派なイエスの弟子になりました。『そんな奴らとつるみやがって』と、イエスの評判は当然悪くなりましたよ。我々だったら『あの人といると自分も嫌われる』と分かっていたら、自分がどう思われるか気になって、なかなかできることじゃない。だけどイエス様にはそんなの関係ない。最強に男気がある姿に惚れました」

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 こうした“イエスの愛”に触れ、なかには説法中に泣き出してしまう客もいるという。偶然牧師バーを訪れて説法を聞き、洗礼を受けてクリスチャンとなった人はこれまでに何人もいる。歌舞伎町の片隅の中華料理屋に“二次会”で赴き、そこで洗礼を授けたこともあった。

わからないことだらけでも気楽に『キリストを信じている』

 店を訪れた30代の男性客が話す。

©️文藝春秋

「私は元々キリスト教に興味があったわけではなく、仕事の鬱憤晴らしで毎晩ゴールデン街に来ては朝まで酒を飲む生活を送る、ただのサラリーマンでした。偶然他の店に勧められてハシゴ酒で辿り着いたのが牧師バー。キリスト教というと厳粛だったり勧誘されたりするのではと思いましたが、牧師なのに『宗教が嫌い』とか言い出すし、牧師自身もこの辺でよく飲み歩く酒飲み。店では私の大好きなジミ・ヘンドリックスが大音量で流れていたりして、警戒心が一気に下がりましたね。

 聖書は分厚くて、わからないことばかり。ただ、それでも『キリストを信じている』と言っていいのではないかと、今は気楽に思うようになりました。日曜に店に電気が点いているのを見ると、誘蛾灯に近づく虫のように、ふと足が伸びてしまいます。最近では、近くの教会にも顔を出すようになりました。次のイースターで洗礼を受ける予定です」