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妻が怖くて帰れない 「帰宅恐怖症」が家庭も職場も破壊する

2018/05/07

役割は変化、だけどうまく分担できていない

【男性相談者の証言】

 私も妻の負担を減らそうと、できるかぎり手伝おうとするのですが、妻には妻のやり方があるらしく、自分のやり方と少しでも違うと、文句のオンパレードです。やればやったで文句を言われるし、やらなければやらないで文句を言われます。一体どうしたらいいんだ! という怒りもあるし、正直、怖さもあります。

 では女性の言い分はどうでしょうか。

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【女性相談者の証言】

 共働きなのですが、子供が生まれてからは毎日が忙しすぎて、ソファーでゆっくり横になった記憶が、ほとんどありません。満員電車に揺られる通勤の行き帰りが唯一の自分の時間でした。
 夫は気分転換に外で飲んでくることもできますが、私にはそんな時間すらない。私ばかりが仕事に家事に育児にと、負担が大きくて不公平。そう思って、いつもイライラした態度をとっていました。
 お互いの役割が変化しているのに、うまく分担することができていない。それが夫婦関係に大きな影響を与えているのです。

©文藝春秋

妻が怒っている理由が分からない

 とはいえ、いきなり帰宅恐怖症になってしまうわけではありません。順をおって解説しましょう。先ほどの証言から分かるように、女性は常に余裕がない状況に置かれています。そこから次のような展開が待っています。

1 妻がイライラしているので夫婦喧嘩が繰り返される。

2 夫は、妻が怒る理由が分からない。

3 妻は、夫が「分からない」と感じていることが分からない。だから言葉がきつくなる。

4 夫は、責められる原因が分からないから、妻を避けるしかなくなる。

5 妻は、夫が逃げていると感じて、さらに追い込んでいく。

6 夫は妻と顔を合わせないため、「家に帰りたくない」と思い始める。

7 家に帰れなくなった夫は、別居や離婚を考えはじめ、悪循環に陥る。

 これで分かるように、そもそもの原因は夫婦の考え方のすれ違いです。男性は妻が怒っている理由が分からない。帰宅恐怖症は、この「分からない」から始まるのです。