ロシア軍によるウクライナへの侵攻が1カ月を超え、日本においても核共有や日米同盟など、安全保障をめぐる議論の機運が高まりつつある。そんななか昨年7月まで国家安全保障局長をつとめた北村滋氏が「文藝春秋」に「国家安全保障戦略『3本の矢』」と題した論文を15ページにわたって寄稿した。
その論考で、北村氏は、日本に対する脅威に対処するための課題を3つ挙げる。
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まず1つ目はミサイルギャップの存在。北村氏は、北朝鮮及び中国が保有するミサイルの能力について分析したうえで、次のように断じる。
〈我が国に対するミサイル攻撃を実効的に阻止するためには、『新たなミサイル阻止力』、すなわち、敵のミサイル発射能力や指揮中枢そのものを直接打撃し、減衰させる能力を保有することが必要になっている。そして、我が国がこのようなミサイル阻止力を保有するという意思を相手に示すことにより、我が国に対してミサイル攻撃を行えば、反撃を受けると認識させることが、ミサイル攻撃そのものの抑止につながる〉
2つ目が「海上保安庁の体制整備」。尖閣諸島周辺で、中国の海上保安機関である海警が活動を年々活発化させている状況を踏まえ、海上保安庁の体制を整備する必要があるという。
〈海上保安庁の法的権限は余りにも貧弱だ。海上保安庁の巡視船が頻繁に外国公船による不法な侵入への対応を行っていることを国民の誰もが知っている。そして、その崇高かつ困難な任務に立ち向かう海上保安官各位には最大限の誇りと敬意を有している。
しかし、驚くべきことであるが、海上保安庁法では、こうした最も重要な日常的な活動が、海上保安庁の任務として明確に規定されていない。組織の任務に関する法的根拠の段階から、外国公船への対応を定める海警法とは余りにも大きな乖離だ。我が国の領土領海を守る活動は、主権の直接的行使に他ならない。「領域警備」を、海上保安庁の任務としてしっかりと法律に規定しなければならない〉