最終回が目前に迫るNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。親子3世代・100年にわたる愛の物語は、どのような結末を迎えるのか。「週刊文春」はこれまで何度もカムカムについて報じてきた。最終回を控えた今、読み返したい記事をあらためて公開する。文春でしか読めぬものがある――。(初出:週刊文春  2022年3月17日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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物語のキーマン・伴虚無蔵を演じる松重

「ド貧乏だったよ。バイトをしながらギリギリの生活で芝居をやっていた。あいつは昔から真面目で、一緒に飲んでても『明日、朝4時から築地のやっちゃ場(青物市場)でバイトだから』って帰っちゃうんだよね」

 

 そう話すのは松重豊(59)の旧友で、世田谷区経堂のバー「アナログ」の店主、奥山浩司氏だ。

「孤独のグルメ」でブレイク(写真 ドラマ公式HPより)

 日本の時代劇を支えてきた“大部屋俳優”伴虚無蔵を演じている松重。ひなたを映画村のバイトに誘い、師匠的な存在として物語のキーマンとなっていく。

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 アクション指導の中村健人氏が明かす。

「モデルは『5万回斬られた男』と呼ばれた故・福本清三さん。福本さんは礼節を重んじる方でしたので、松重さんは『こうした方がいいよね』と、道場の出入りの際に一礼することを提案してくださいました。立ち回りに関しては『言ったとおりにやりますので』と」

 着流し姿で暮らし、侍言葉を使う変わり者の虚無蔵は、いまや松重の新たなハマリ役となりつつある。

 松重のこれまでの代名詞といえば、「孤独のグルメ」(テレ東系)の井之頭五郎役。2012年に始まった同シリーズはすでにシーズン9まで放送済みだ。

「ギャラは30万円からのスタートでした。以降も少ししか上がってない。松重さんは倹約家で、ジムに通わずウォーキングと1000円の腹筋ローラーで体型を保っている」(ドラマ関係者)

 松重は下積みが長く、苦労続きだった。明治大学時代は家賃2万4000円の4畳半・風呂なしアパートに住み、三谷幸喜主宰の劇団「東京サンシャインボーイズ」に参加。その後、蜷川幸雄の劇団に入団するもバイトに明け暮れる日々。

「俺とは下北沢の『珉亭』(中華料理屋)のバイト仲間だった。基本、土日の混雑時に助っ人として行くので、あいつも俺も他のバイトとかけもち。珉亭は賄いもあるし、バイトの後の銭湯代も出るしビールも飲める。洗い場以外は天国みたいなバイト。時給は500円だったかな」(前出・奥山氏)

 バイト仲間には、ザ・ブルーハーツ(当時)の甲本ヒロトや、その弟で「カムカム」で安子の父親役を演じた甲本雅裕もいたという。