5日、スピードスケート女子の高木菜那(29)が現役引退を発表した。都内で開かれた会見で高木は「未練がないわけではない」としながらも、「自分の意志で高木菜那として氷の上に立ち、戦えたことが引退を決意したひとつの理由」と語った。

 平昌五輪では金メダル2つ、北京五輪では銀メダルを獲得していた高木。妹の美帆(27)と歩んだ輝かしいアスリート生活は、家族の支えがあってこそだった。平昌五輪の際、高木姉妹の家族たちのサポートを報じた「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2018年3月8日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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高木姉妹を支え続けた「両親の献身」

 活躍は両親の献身なしには考えられないと、一家の知人は語る。

「父の愛徳(よしのり)さんは会社勤め、母の美佐子さんも美帆ちゃんが幼稚園の頃に新聞販売店の託児所に預けて、新聞配達を始めました。スーパーのレジ打ちと掛け持ちしている時期も長かった。お兄さんも含めて子ども三人がスケートをやっていましたから、走るように歩く、いつもそんな感じで忙しそうでした。でも笑顔を絶やさない素敵な人なんです」

ゴール前で抜け出した高木菜那(平昌五輪) ©JMPA

 子供たちも中学に上がると母の新聞配達を手伝った。

「早朝に新聞を配って、それからトレーニングを兼ねて高校まで自転車で通っていました。お正月はお父さんも一緒になって配っていましたよ」(近所の人)

 妹の美帆は中学生でバンクーバー五輪出場を果たし、注目を集めたが、決して天狗になることはなかった。姉妹が小学生の頃から通った「高橋まんじゅう屋」の高橋美哉さんが語る。

「美帆ちゃんが高校三年生の夏休みですね。私が体調悪くしていたら、『三日間オフがあるから、何かお手伝いできることありますか?』って。お金ほしいとかそういうことじゃなくてね。働いていても、常に目が動いてて、他の人の動きを見て判断してる。美帆ちゃんの場合は一個言ったら十わかる。普通の子なら一カ月かかるような仕事を三日ですぐ覚えて。計算も一度も間違えなかった」

 姉の菜那は高校卒業後、スピードスケートの名門・日本電産サンキョーに就職した。帰省した際、家族ぐるみで交流のあった「竹葉寿司」に一家で出かけた。