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 先月、そうした事態を防ぐための「クラウン(王冠)法」と呼ばれる法案が下院を通過した。生まれつきの自然な毛質(ナチュラルヘア)への差別を違法とする法律だ。カリフォルニア州、ニューヨーク州などではすでに制定されており、近年はニュースキャスターや企業の上級職まで含めて黒人女性たちのヘアスタイルが自然に、自由に、活き活きとしたものになっている。

 先日、黒人女性として初の最高裁判事となるための指名承認公聴会を終えたばかりのキタンジ・ブラウン=ジャクソン判事もシスターロックスと呼ばれる極細のドレッドロックスであり、ナチュラルヘアの人物を米国最高裁判所のメンバーとすることに黒人女性たちが格別の意味を見出している。他方、こうした歴史的経緯があるため、髪型を揶揄されることへの強い抵抗感が黒人女性側にある。

 クリス・ロックも自身の幼い娘に「私はなぜグッド・ヘア(縮れの少ない髪)じゃないの?」と聞かれ、黒人女性の髪についてのドキュメンタリー映画『Good Hair』(2009)を製作している。そのクリスがジェイダの髪を笑い物にしたことを、同映画の出演者である脱毛症の女性は厳しく批判している。

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「黒人全体が貶められる」と憂慮する声

 ニュース専門ケーブル局MSNBCの黒人女性キャスターは自身の番組で、黒人同士の諍いの際に平手打ちが出たことについて「白人には理解できない」黒人社会の出来事だと発言し、白人聴視者、黒人聴視者の双方から人種に関係のない暴力事件だと強く批判された。

 暴力に人種は関係ないとする声が多い一方で、黒人、しかも双方が大物セレブの暴力シーンが生中継されてしまったことについて、「黒人がさらに恐れられる」「黒人への差別が強まる」「黒人全体が貶められる」と憂慮する声が出ている。それを裏付けるように保守系ケーブルニュース局Fox Newsの白人女性キャスターは「アカデミー賞は hood ではない」とコメントしている。hood とは貧しく荒んだ黒人地区を指す俗語だ。